意志表明
前作ボートの失敗が悔しくて仕方がない。そのリベンジだ。すぐにでも取りかからないと気が済まない。
ほかにもやりたいことは山ほどある。アンバサダー5500Cのチューニング。レボのチューニング。シイラ用のベイトロッドの作製。カーディナル33/44のチューニング。カーディナル544の作製・・・等々。
しかし、それらは後回しだ。真っ先にやりたいのは、第2期ペダルボートの作製だ。
足こぎ幻想の払拭
前作ボートの失敗を総括しておこう。
失敗その1。黒潮の本流域まで漕ぎ出し、そこで縦横無尽に魚群や鳥山を追いかける。そのためには、黒潮に逆らってボートが進まなければならない。したがって理論上のスクリューの性能は時速12km。しかし、そのスクリューの性能を発揮させられるほど、機関部は強くなかった。
失敗その2。沖合の激しい風波でも、絶対に破壊されない頑丈な船体。木材の立派な骨格を備え、それを発泡スチロールの浮力体で覆い、その表面を紙に塗り重ねたペンキで固める。骨、筋肉、皮膚のいわば脊椎動物のような構造。その結果としての100kgものボートの自重。パワーウェイトレシオが悪過ぎて、とても沖合まで漕ぎ出せなかった。
失敗その3。脆弱な機関部がひとたび故障すれば、せっかくのスクリューも単なる抵抗物と化し、重い船体はパドルで漕いでもいっこうに前には進まない。船体とパドルとのアンバランス。スクリューに偏重した運用構想。こんなボートで下手に沖に出たら危険だ。
これらの問題点をさらけ出して、1艘目のボートはみじめな失敗に終わったのではなかったか?
コンセプトの練り直し
パドルによる航行性能を重視する。足漕ぎによるスクリューの役割は、キャスティングを行うために両手を自由にすることだ。とはいえ、足の方が手よりも強力なので、パドルがスクリューと同等に働いていつでもパドルで航行できるという安心のもと、スクリューに偏って運用することもありだ。
パドルでの航行性能を高めるためには、船体を軽く、抵抗を少なくする必要がある。そのためには、船体の構造を変えなければならない。それに関してはプランがある。甲殻類か昆虫のように、骨格を持たずに、頑丈な殻で船体を構成すればいいのだ。自動車のモノコックボディーのようなものだろうか。
材料は、3mm厚の合板を予定している。合板を切って、捩じって、貼り合わせて、形を作る。そのあとでエポキシ樹脂で固めてはどうだろうか? そのような作り方で、カヤックを作製する人がいる。ステッチアンドグルーという、カヤック作りとしては一般的な工法だ。それが大いに参考になる。
そうすると、前作の船体よりも強度が落ちて、沖合の強い風波に耐えられないのではないか? そのとおりだ。だから荒れた海には出てゆかない。あるいは、沖で急に風や波が出てきたら、即座に帰投する。その時は軽い船体の、船足の速さが有効だろう。
イメージの構築
合板は多少は湾曲する。しかし自由自在に造形するとはいかないだろう。おそらくきちんとした型紙を作り、その通りに裁断しなければ、パーツとパーツの間に隙間が空いてしまうだろう。CADが必要か? いやいや、そんな投資はできない。
それよりも、パーツの数を減らして、隙間の空きようがないようにできないか? たとえば1枚の合板を折り紙のようにして、船体を作るとか。そんなことができれば、かなり楽に船体が作れるのだが。
試してみよう。実際に合板で実験するのは大掛かりすぎる。似たような素材で、小さな模型を作ってみよう。そう思って、工作用のボール紙で、スケール20分の1の模型を作ってみた。
かなりいける。1枚の合板で作るのはさすがに無理だが、2枚を貼り合わせればできる。カヤックと違って、下半身が入り込む船室は要らないので、いっそう簡単だ。ただし、ボール紙では折り目を入れることが可能だが、合板ではそれはできない。しかし、合板に切れ目を入れても、切断面は同じ形をしているので、角度をつけて再度貼り合わせても隙間が空くことはない。この方法でいけると思う。
さ、やるか!