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合板の裁断

 船体の材料は3mm厚の合板。耐水性のあるT1という規格だ。耐水性の劣るT2規格のものよりずいぶん値が張る。しかし、海外のマリン規格よりははるかに安い。本式のステッチアンドグルー方式によるカヤック作りではマリン合板を使うのだが、どうせ後でエポキシ樹脂を染み込ませるのだから、それほど気を遣う必要はあるまい。T1でいいだろう。T1の方がT2よりも値が高いとは言っても、所詮は合板。手軽に買える。
 合板を切り抜いて、型紙どおりの形にする。そのための工具は、大き目のカッターだ。定規を当てて何度か刃を走らせると、苦もなく裁断できる。当初はカッターではだめかもしれない、ジグソーを買わなければならないかもしれないと思ったのだが、その必要はなかった。

パーツ

 上の写真は合板から切り出したパーツの全体像である。まだ船体の前部、左右のブロックの、天板を除いた、底部と側部だけだ。組立により船体に反りが出るだろうという予測で、天板は現物合わせの方法で採寸することにしている。

骨格の仮組

 生物に例えるなら、骨格と言うべきもの。本来これは「節」である。竹は節があることによってあれだけの弾性と強度があるに違いない。だから今回の船体は、多くの節を持つ。しかも縦方向にも1枚の節が全体を貫いている。
 空洞の外骨格(殻)を作ってから節を入れることはできないので、節を先に作ってからそれを殻で覆う。したがって節が骨格のような役割を果たすことになるのだ。しかし、骨格と呼ぶには強度がない。単体ではぐにゃぐにゃしていて、節だけでは形状を保つ機能がない。だからこれは「骨格」ではなく「節」なのだ。下の写真は節の仮組である。

節

 この状態では、縦方向の板と横方向の板にそれぞれ半分ずつ切れ込みを入れて、十字にはめ込んであるだけだ。

接着の開始

 節を骨格のように利用しながら、外骨格を構成する板を張り付けてゆく。外骨格を構成する板は、左右に5枚ずつある。それを1枚ずつ貼り、十分な量のエポキシ接着剤で塗り固めてゆく。板を一枚貼るごとに、一晩おいて接着剤を硬化させなければならない。しかし、板を貼るごとに剛性が増し、ボートとしての形状ができあがってゆくのは、わくわくするような作業の進捗ぶりだった。

接着開始

 接着には90分硬化型(90分でゲル化し始める)エポキシ接着剤を用いた。2液式で合計100g入り、1セット600円ちょっと。これを大量に使用する羽目になった。
 完全には密着しない歪な切断面を大量の接着剤で覆い、接着する辺を埋め込むようにして接着する。塗布した接着剤のうち幾分かは合板に吸収される。いったい何セットの接着剤を消費したのだろうか。かなりの金額になったはずだ。
 おまけに、裁断直後のパーツ状態での重量に対して、30%増しぐらいにずっしりと重くなった。しかし、その分強固に接着され、期待以上の剛性のある船体に仕上がりつつある。しかも、前回の発泡スチロールの船体では20kgあった1ブロックが、現状では約3kgだ。天板を追加して、ブロック全体をエポキシでガッチリと塗り固めてもなお5kg程度に収まるなら、重量的には大成功だ。

天板以外接着完了

ジョイント部

 前回の失敗に対する改良点のひとつは、ジョイント方法である。前回の発泡船体は、前後のブロックをツーバイフォーの木材4本でジョイントし、それぞれを4本のボルトで固定する設計だった。つまり船体の前部ブロックと後部ブロックをつなぐのに、片側で16本ものボルトを使ったということだ。左右両側だと32本にもなる。
 なんて馬鹿なことを。しかしそれは強度を重視したからだ。その結果、組立ての際に船体全体で56個ものナットを締める必要があり、組立てにも分解にも優に1時間半かかった。
 しかし、そこまでしなくとも十分な強度が確保できるとわかっている今、同じことを繰り返す必要はない。前部ブロックと後部ブロックをつなぐための木材は上面と下面に1本ずつの2本でいいし、それを固定するボルトは両端に1本ずつ、上下合わせて4本でいい。さらにそこに工夫を凝らし、貫通式にすることによって、2本のボルトに4本分の仕事をさせようと予定している。

ジョイント部

 ジョイント部には、内径13mmの塩ビ管が通っている。この中を1本のボルトが貫通し、1個のナットで上面と下面を同時に締めようという設計だ。この部分から海水が侵入しないように、塩ビ管を通したのである。
 さらにこのボルトが、機関ケースを船体に固定する役割をも兼ねるようにする予定だ。そうすると、前回は、前後のブロックをつなぐのに16本、ブリッジを固定するのに4本、合計20本使ったボルトを、たった2本に集約することができるのである。船体左右合計なら、40本のボルトを4本に減らせたことになるのだ。
 最初からこういう発想はできなかったのか。失敗から教訓を得ることによって、ようやくつかみ取ることができた。それが「経験を積む」ということなのかな。

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