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ユニバーサルジョイントの作製

 浅瀬からの出航時もしくは帰還時に、海底の起伏にスクリュープロペラをぶつけないように、駆動パネルは上下に遊動するように設計した。平行四辺形の最後尾の1辺となる駆動パネルが、垂直の姿勢を保ったまま上下にスライドする、パンタグラフのような構造だ。
 そのために、プロペラ用とステアリング用の2本の中間シャフトには、角度の変化があってもスムーズに回転を伝達できるよう、それぞれ2カ所にユニバーサルジョイントを備えさせることにした。
 ユニバーサルジョイントの中心的なパーツは、十字シャフトだ。それはM6のステンレスボルトで作った。

十字シャフトの材料

 2本のシャフトの中央に溝を削り、十字に組み合わせて、1号のナイロンハリスでぐるぐる巻きにし、瞬間接着剤で塗り固めた。そして最後にワッシャーを接着する。

十字シャフト

 かたや、軸受けの材料は、棚受けのL字型ステンレス金具だ。それを切断して、プレート部分を利用する。

軸受け

 パーツ同士を接着し、その後、ナイロンモノフィラメントで厳重に縛り、エポキシ接着剤で塗り固めた。

ユニバーサルジョイント

 詳しい説明は省くが、ユニバーサルジョイントは、角度の変化で回転の伝達速度が一定ではなくなる。2つのジョイントを持たせる場合は、その角度変化による速度の変化を打ち消しあうように、シャフトと軸受けの向きを配置しなければならない。
 ユニバ―サルジョイントの作製は成功し、期待通りの機能が得られた。

全パーツの作製終了

 パンタグラフ構造は、機関ケースと駆動パネルを4本の支柱でつなぎ、左右に二つの平行四辺形を形成して機能する。前項の中間シャフトは、その中で角度を変化させながら機能するのだ。
 そして最後に、非常時用のパドルと、ボートの存在を示す赤旗を作って、パーツの作製はすべて終了だ。

ペンキ融着問題

 すべてのパーツをクルマに積み込み、進水式の日を待った。
 ところが、ここで次なる問題が発生した。アクリル系の水性エマルジョンペンキが、いつまでたっても完全に硬化せず、パーツ同士がクルマの荷室で触れ合うと、べったりと融着するのだ。古いものでは、塗装してから半年もたっているのに。まるで両面に塗布して乾燥させ、その後に貼り合わせるタイプの合成ゴム系接着剤のように、しつこくへばりつく。  それを無理に引き剥がそうとすると、張りぼてが無残に剥がれる。広い範囲でべりべりだ。これには相当参った。
 最初のうちは再度紙を貼ってペンキを塗り直したが、結局同じことが起こって、きりがない。そこで、ペンキの上からラッカーをスプレーして、ペンキの塗装面を覆うことにした。

 しかしラッカーも完全に硬化するには時間がかかり、ラッカー面もやはり互いに融着した。そこで、剥がれるたびに、エポキシ接着剤で補修することにした。そうすれば、やがてエポキシでの補修範囲が広がり、融着しなくなっていくだろう。パーツ同士の接触面はたいてい決まった場所だから。

進水式の失敗

 7月15日。いよいよ進水式を迎えた。
 ビーチの駐車場から、合計100kgにもなるパーツを、何往復もしながら波打ち際に運び、組み立てた。組立てにはやはり1時間以上かかった。
 下の動画は組み立ての工程を、半分以下に抜粋したうえに、さらに5倍速で早回ししたものだ。

 このとき、結局進水することはできなかった。組み立ての最後の最後、パンタグラフ構造の辺の長さにミスがあった。ボルト間の距離が本来79cmでなければならないところ、どういうわけか83.5cmあったのだ。
 ボルト4本を埋め直さなければならない。4.5cm、位置を修正したうえで。
 しかし寸法を修正しさえすれば、正常に機能しうることは、確認できた。

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