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駆動系レイアウトの選択

 船体は、浮力体を2本並べた、H字型の双胴艇と決めている。したがって、船体の中心線上にスクリュープロペラを1基配置するなら、そのレイアウトはかなり自由になる。
 多くの船舶でプロペラが船尾にあるのは、プロペラの直後に抵抗となる物体を置くことを避けるためである。双胴艇なら、プロペラが船首から船尾までのどこに位置しようとも、その線上には抵抗となるものは何もない。
 したがってプロペラの位置は、下の図のように、前、後、中の、3通りが考えられる。中というのは通常考えられないレイアウトだが、ペダルに直結できるため、ギアの数を1つ減らすことができるというメリットがある。その一方で、舵を前にせよ後ろにせよ、プロペラから離さなければならないという大きなデメリットもある。だから中という選択肢はここで外す。

スクリューの位置

 次に、これに舵を加えて描いてみる必要がある。下の図は、いずれも左に旋回しようとした時の舵を表している。

後ろスクリューの場合の舵の位置

 スクリューが船尾に位置する場合、通常なら舵は左のモデルのように、プロペラの直後に位置する。これがもっとも一般的な船のレイアウトだ。次に、舵を自動車の前輪のように考えて前に持ってきたのが、真ん中のモデルだ。このレイアウトでは小回りの利かない船になる。なぜなら船体が前に進まない限り、舵に水流が当たらないからだ。ある程度の速度が出ていなければ舵が効かない。そのようなデメリットを緩和するためには、よほど大きな舵を付けなければならないだろう。それより、右のモデルのように、いっそ舵をなくして、プロペラ自身が方向を変えるという手もある。小出力な船なら、これも十分にありだ。これなら舵がない分だけ駆動系がコンパクトに収まるメリットがある。
 もし、スクリューの位置を船首に持ってくるなら、同様に、舵の方法は下の図のようになるだろう。いずれにしても、スクリューと舵を遠く離すレイアウトはやめたほうがよさそうだ。

前スクリューの場合の舵の位置

 私は舵を省いた、スクリュー自身が向きを変える方式がいいと思う。高出力の場合は、この方法は動力のパワーが操舵を不安定にする恐れがあるが、たかが人力のペダル方式である。全く問題あるまい。それよりも、パーツ数を減らしてコンパクトに収まるのがいい。組み立てるにしても分解するにしても、浮力体、デッキ、駆動系の3つで済ませたい。そこに操舵系を加えて4つにしたくない。
 とすると、あとはスクリューを前にするか後ろにするかを決めるだけだ。それは下の図によって決めた。

前スクリューと後ろスクリューの比較

 一目瞭然だが、ペダルからプロペラに動力を伝えるシャフトの長さが、スクリューが前にある方が、はるかに短くて済む。それに自動車の運転で慣れているように、操舵機能は前にある方が自然だ。
 これで決まった。前スクリューでいく。

 

駆動系に操舵系を組み込む設計上の問題点

 操舵系を駆動系に組み込んで一体化する。この設計上の課題は難しかった。しかし1つのアイデアがそれを可能にした。互いに独立して回転する2重シャフトである。下の図のように、外側のシャフトはパイプになっていて、その内側に別のシャフトを包み込み、それぞれが互いに独立して回転するのだ。

駆動系+操舵系

 しかしこのアイデアには問題があった。一見、2つのシャフトがひとつの軸受けを共有しながら、互いに独立して回転するというオーダーを満たしているように見える。ところが、ある条件を想定すると、見えなかった問題点が浮上する。その条件とは、ギアやシャフトに強い負荷がかかった状態である。
 2つのシャフトが独立して回転するように見えて、実は完全には独立していない。干渉があるのだ。それはこういうことだ。強い力でペダルをこぐと、駆動系のギアに負荷がかかる。するとプロペラを回そうとする力が逃げて、プロペラを収めたケースが水平方向に回転してしまうのだ。つまり、駆動系の力が操舵系に伝わるのである。その結果、常にステアリングを強く抑えていないと、舵が左へ切れる癖が出ることになる。
 この問題をどう解決すればいいのか、夜な夜な思い悩んだ。解決方法はあるにはある。プロペラを2基に増やして、互いに反対方向に回転するようにすればいいのだ。そうすればプロペラを収めたケースの水平方向への回転は抑えられる。しかし、そんなことをして駆動系のユニットをみすみす大型化してしまいたくない。それにもう1基プロペラを作るなどやりたくない。ましてや、2基になった分、より小さなプロペラに作り直すなど、御免こうむりたい。

2重反転シャフトというアイデア

 では、どうするか? 頭の中に火花が飛んだ。ようし、閃いた。プロペラは1基のままで、ギアだけを互いに反転する2つに増やせばいい。しかも、シャフトは重ね合わせ、極力駆動系全体の大きさを変えないで。
 言うなれば2重反転シャフトだ。シャフトであるパイプが回転する中で、もうひとつのシャフトが反対方向に回転するのだ。それぞれに装着したギアが互いに反対方向に回転しながら、ひとつのギアを回す。それが1基のプロペラを回す。こうすれば、プロペラを収めたケースを水平方向に回転させようとする力はたがいに打ち消しあい、操舵系には影響を及ぼさなくなるはずだ。
 この2重反転シャフトのさらに外側で、3重目として、操舵系のシャフトがステアリングの回転を伝える。それを絵に描いてみると、下の図のようになるだろう。

2重反転シャフト

 けっこう込み入った機構になってきたな。もはやシンプルとはいえないしろものだ。ちゃんと機能し、壊れずに働き続けるものが作れるのか? やってやろうじゃないか。

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