アルミ製ハンドルの弊害
私は旧型5500Cには、カウンター・バランスド・シングル・ノブのハンドルが似合うと思う。何といってもそれは私が初めてアンバサダーを手にしたときの姿だ。後にツイン・ノブのハンドルもあることを知ったが、そのノブはまん丸で指先を転がり、巻きにくいと感じる。
カウンター・バランスドのハンドル・ノブは平らで、指先から転がることはないのだが、問題が一つある。プレートの材質がアルミなので、海水による腐食に弱く、ノブの根元が削れてしまうことだ。だんだん薄くなり、最後にはシャフトを支えきれず、折れる。毎週釣りに行くなら、3年くらいしかもたない。
たとえプレートがアルミ製であっても、下の写真のように補強材でサンドイッチされた上でシャフトがカシメられていれば、強度的にも耐食的にもまったく問題がないのだが、カウンター・バランスドのシングル・ノブのハンドルにはそのようなものはない。
だから私はステンレス製のハンドルを自作する。そのことによって、わざわざパーツの重量を増し、アルミ製ハンドルの軽量のメリットを捨て去ることになるのだが、ハンドルが折れることを気にして釣りをするよりはずっといい。
前作に対する改良点
私はかつて、旧型アンバサダーを今回とは異なる方法で5.3:1に改造し、使っていた。そのときにもステンレス製のハンドルを自作した。ギアはすぐに破損して(板ばねのクリックピンが折れた)使えなくなったが、ハンドルは数年間使い続けた。それが下の写真だ。
この前作は、シャフトからノブまでの長さが40mmだ。ギア比を4.7:1から5.3:1へと高速化するに伴い、オリジナルのハンドル長35mmを、5mm延長させた。
この狙いはドンピシャで、実に巻きやすい、いいハンドルになった。オリジナルの35mmはくるくるとコンパクトに巻くには具合がいいが、大物をかけてぐりぐりと巻くには力不足だった。5mmの延長はその点を改善しながら、旧型5500Cの端正なシルエットを損なわず、デザイン的にもベストだった。
しかし重大な問題が一つあった。カウンター・バランサーが小さくて、完全なバランスを実現していなかった。まれにキャスト時にハンドルが勝手に回転してクラッチがつながり、ギャーとギアが鳴き叫ぶことがあった。これはギアの歯が鳴っているのではない。ピニオンギアとスプールとの噛み合い部が空回りしているのだ。即座にギアを損傷させるものではないが、何度も繰り返すと、歯が飛んでしまうかもしれない。これから作る新作では、完全なバランスを実現したい。
長さの選択
歴代のアンバサダー4000/5000/6000クラスには、様々な種類のハンドルが装備された。ハンドル長が28mm、35mm、40mm、47mm、50mm。写真には収めていないが、45mmというのもある。
今回は45mmでいく。前作の40mmはとてもバランスのいい長さだったが、後にはリールのギア比を6.3:1に高めるのだから、そのことを視野に入れてさらに5mm延長する。
それによって、パーミングした手のひらの中でコンパクトに巻けるベイトタックル特有の巻き心地は損なわれるだろう。反面、魚とのファイトが長引いたときでも、指が攣るような窮屈さは払拭されるだろう。
デザイン的にはどうか? まるでカゴ釣り師のリールのように、ハンドルが不格好に長く見えないか? そのことには多少目をつぶることにしよう。旧型はハンドルが低いから、それほど腰高の不格好にはなるまい。