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着想

 タービンブレーキ。それはABU社の遠心ブレーキに代わる、空気抵抗を利用した非接触型の、夢のブレーキである。その着想は10年近く前から、私の頭の中にあった。
 機能としては、遠心ブレーキには十分なものがある。私はリールの遠投性能にはそれほど重きを置いていないので、釣り場でブレーキ力の微調整ができなくても、不便は感じない。遠心ブレーキは、キャスティング動作の初期にスプールの回転を抑えてくれさえすれば、それでいい。あとはサミングで何とかする。強い向かい風が吹いてバックラッシュが多発するような場合には、メカニカルブレーキを少し締めてやればいい。

遠心ブレーキ

 しかし、遠心ブレーキには欠点がある。それは、海水がブレーキドラムに侵入した際に、ブレーキが利かなくなってしまうことだ。多少の海水なら使っているうちに吹き飛ばせるが、その海水がギアのグリスやオイルをブレーキドラムに運んでしまうと、もう役に立たない。カップを開けて、ドラム内のグリスやオイルを拭い取らないと、ブレーキは復活しない。その際に、ブレーキブロックが脱落して、紛失してしまいがちである。
 なぜこんなことになるのか。それは遠心ブレーキが、接触型の、摩擦を利用したブレーキだからだ。
 最近のモデルでは遠心ブレーキのその欠点を改善し、ブロックが脱落しないように、バーの先に引っかかるようになっている。だが私は敢えて別の解決策を示したい。タービンブレーキを開発し、遠心ブレーキをそれに置き換える。それは私なりの理想の追求である。

考察

 どうせなら、これから私が生み出すタービンブレーキは、ツマミひとつで任意にブレーキ力の調節ができるようにしよう。カップを開けずに外部からブレーキ力を調整することができないのは、遠心ブレーキの弱点のひとつなのだから、この際それをも克服できるようにしたい。そうすれば、外部からのツマミによる調整が可能な、電磁誘導ブレーキにも対抗できる。

電磁誘導ブレーキツマミ

 どのようにすればそれは可能か? こんな考察をしてみた。
 掃除機の吸い込み口を手でふさぐ。すると掃除機のモーターはうなりを上げて回転速度を増す。なぜなのか? 負荷がかかって、一生懸命に空気を吸おうとしているのか? しかし疑問を感じる。負荷がかかって、なぜ回転速度が増すのか? 負荷がかかったのなら、逆に回転速度が落ちるのではないのか?
 きっとそうだ。空気流入を遮断されたから、掃除機のタービンは減圧し、空気抵抗が減って低負荷となり、モーターの回転数が増すに違いない。この原理をタービンブレーキに取り込めないか?

観察

 あらたな機構を組み込む場所は、左カップ内にしかない。右カップ内には、ギアとドラグとクラッチ機構が詰め込まれている。片や左カップ内にはレベルワインダーを駆動するギアがあるだけだ。

左カップ内

 このうちのいずれかのギアから動力を得て、タービンを回し、吸入した空気を排出する。空気の吸入口を開放すればブレーキは強く効き、絞れば弱まる。とすると、動力を得るギア、タービン、そして吸入口のコックの3つのパーツが必要だ。
 そのために使えるスペースはどれほどあるのだろうか? それを確認するために、まずは左カップ内のギアの噛み合わせを描いてみよう。

左カップ内の配置

 新たに組み込むパーツは、既存のギアの噛み合わせを妨げて位置することはできない。とすると、使えるスペースは限られる。それは下図のような形状内に収まらなくてはならない。

有効スペース

設計

 さて、タービンブレーキの心臓部となるタービンブレードは下図のようなものだ。

タービンブレード

 それを筐体に収めて、吸入口と排出口を設ける。すると下図のようなユニットになる。

タービンユニット

 それを左カップ内に配置するとすれば、下図のような設計になるだろう。

設計図

 吸入口を絞るコックは、どのような配置にするか、まだ検討中だ。

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