予期せぬ障害
前頁までで、メインギアに格納する、マルチディスク対応の、クリック付きドラグワッシャーが完成した。これにより、今後、メインギアは無加工で使用することができる。しかもメインギアはどのギア比でも、直径と歯数は別として、窪みと耳型の溝は共通の寸法だから、このパーツは今後の活用幅が広い。いくつか作って、私の保有する新型アンバサダーを、ことごとくドラグクリック付きに手直ししてやりたい。
他方、ピニオンギアはそうはいかない。このことはすでに解説済みだが、どのタイプのギアであろうと、何らかの手を加えなければ組み込むことができない。今回使用しようとしているステンレス製、6.3:1のギアであれば、スプールと噛み合う部分の穴の内径を押し広げなければならないのだ。
ところが、これからピニオンギアの改造に取り掛かろうとするときに、予期せぬ事態が発生した。予備のギアが手に入らないのだ。釣り道具屋にメインギアとピニオンギアを3個ずつ発注したら、ピュアフィッシングから、下の写真のとおり「生産中止より相当年月が経過しており、パーツの保有年限を超えているため」部品の在庫がないと通知された。
「ちぇっ。何が“FOR LIFE”だよ」と舌打ちしたが、私の6500Cハイスピード・ウィンチ・プラスは中古での購入である。ピュアフィッシングに文句を言えた筋合いでもないだろう。諦めるしかない。
真鍮製5.3:1への方針転換
そういう事情で、今私の手元には、ステンレス製6.3:1のギアセットが1組しかない。これから数年かけて5500Cのチューニングに取り組むつもりなのだが、そうこうしているうちにこのギアがすり減ってしまったのでは、身も蓋もない。だからこのギアはここ一番というときのためにとっておいて、当面は他のギアで我慢するしかない。
とすると、選択は真鍮製5.3:1となる。ピニオンギアが肉薄過ぎて強度が不安の真鍮製6.3:1を除いて、最もギア比が高いのは、これだからだ。しかも、このギアは現行アンバサダーの主流となるギア比であり、メーカーのパーツ在庫ももふんだんにあるだろうから、供給面での心配がない。
さらに、私は真鍮製5.3:1のピニオンギアなら、過去に旧型5500Cへ適合させるための加工を、一度経験済みである。何のことはない、丸いヤスリを使って、穴の内径を3.0mmから3.5mmにゴシゴシ広げるだけだ。
ただし、注意すべきことがある。ピニオンギアの穴を拡張することは、ピニオンギアを肉薄に、弱くすることだ。例えばドラグを締めあげた状態で大魚とファイトするなど、ピニオンギアに過重な力が加われば、捩じ切ってしまうことになる。だからそれはぎりぎりでとどめたい。そこで、きつきつでもいいからピニオンギアがスプールに通ることが確認できたら、そこで削るのを止めるべきだ。