3層構造の設計
円形に削ったプレートを、次には3層構造に削る。そのもっとも下層の突起には、丸い溝を掘り、そこにピンを巻きつけようというわけだ。
ピンの形状は、“6”の字型にする。
そうと決まれば、あとはプレートを電動ドリルに装着して、ひたすらヤスリを当てるだけだ。
3層構造化作業
3層構造の厚さは、最上層の突起部が1mm、中央の円盤部も1mm、そして最下層のボビン部も1mmだ。
まずは表面を削り、直径23mmの円形プレートから、直径12mm、厚さ1mmの突起部を削り出す。
次に裏面、最下層のボビン部を削り出す。この部分は厚さは1mmだが、直径は突起部よりも少し小さくてよい。ピンの反発力しかかからない部分なので、それほどの強度は要らない。10mmでいく。
途中までは、上の突起部と同じ作業だ。それは割愛し、円形の溝を掘る作業だけを記録しておく。
さらに、ボビン部をD字型に削る。これは巻きつけたピンが回転しないようにするためだ。
クリックピンの作製
クリックピンには、線径0.8mmのステンレス線を使う。これは釣道具屋に売っている、天秤やワイヤーベイトを自作するためのものだ。もともとが釣道具用なので、海水に侵されないし、弾力があるので、何度弾かれても折れにくい。
これを適切な長さに切り、“6”の字型に曲げ、3層ワッシャーの最下層ボビン部に巻き付ける。
とても簡単なものだが、結局のところ、こういうシンプルなものが壊れにくくてよいのだ。
クリックギアの作製
ピンを弾いて音を奏でるのは、クリックギアの役割だ。ギアとは呼んでいるが、他のギアへ回転を伝えるわけではない。ギザギザがピンの先端をとらえて弾くだけだ。
音が鳴るのは、弾かれたピンの振動ではない。そのような音はとても澄んだ音色になるのだが、ここではそのような音ではなく、潮騒の中でも聞き取れる、はっきりした音にしたい。だからギアの歯に弾かれたピンが、次の歯に当たってカチッと音を立てるようにする。
では、どこにそのような歯を設けるか? それは2枚目のワッシャーである。
このワッシャーには耳がついていて、この耳がメインギアの窪みに収まり、メインギアに追随して回転する。かたや、1枚目のワッシャーは俵型の穴が開いていて、シャフトに追随して回転する。この両者が滑り合うことによって回転差が生じる。このときクリックギアがクリックピンをはじくようにするのだ。
まずはこのワッシャーの穴を拡大する作業から始める。その穴の直径は15mm。かたや1枚目のワッシャーの最下層部は直径10mm、ピンを巻きつけて約11.5mm。この隙間でピンが動くのだ。
こうして穴を拡大した2枚目のワッシャーに、ギアの歯を刻むのは、ヤスリでゴシゴシと削る、単純な手作業である。
これで、クリックピンとクリックギアの双方が完成した。
ここまでの設計はうまくいった。作業も順調だった。さらに前へ進もうとするなら、ひとつの難問に突き当たる。それをどう解決すればよいか、相当に頭を悩ました。