塗装面の均一化
まだこの段階では、ブレード表面をつるつるに磨き上げるようなタイミングではない。それより、でこぼこに仕上がったエポキシ表面を、おおまかに平らにに均してゆかなければならない。
事前の予想では、何度か重ね塗りをすれば、エポキシ塗布面は自ずと滑らかになるはずだった。ところがが実際は逆だ。でこぼこは大きくなる一方だった。きっとエポキシに粘り気があり過ぎるのだ。
そこでサンドペーパーで均すことにした。まずブレード面をマジックで赤く塗る。そしてサンドペーパーを掛ける。凹んでいるところが赤く残る。全体に赤マジックがなくなれば、平らになったということだ。
ところが、まだまだらに赤い部分が残っているのに、他の部分ではアルミの地金が出てきてしまう。エポキシの皮膜は思ったよりも薄い。サンドペーパーのひと擦りで、削り取られてしまう。これでは、せっかくの塗装が台無しだ。そこで再びエポキシを塗る。またでこぼだ。そこで再度サンドペーパーを掛ける。するとまたもやアルミの地金が顔を出す・・・。その繰り返しだった。これでは埒が明かないぞ
パテの使用
エポキシは4、5回塗ったところで、放棄することにした。
次に試してみたかったのは、ポリエステル系樹脂である。すでにずいぶん前に購入済みだった。それは自動車のへこみや傷を補修するためのパテである。主剤に硬化剤を混合することにより化学反応で硬化する。撹拌の要領はエポキシと同じだ。硬化剤が毒だから絶対に室内で使うなと説明書に書いてあったが、換気扇を回しながら室内で作業する他なかった。
また説明書には、一度に厚く盛らずに何度かに分け、そのたびに水研ぎして滑らかにしながら重ね塗りせよ、と書いてあった。これはその指示通りにした。混合比は40対1、主剤をゴルフボール大に対して、硬化剤はパチンコ玉大だと説明書に書いてあったのだが、私はゴルフもパチンコもしないからその例えでは分量がわからず、少し硬化剤が少なかったようだ。硬化不良気味だった。
ポリエステル系のパテは半固形であり、粘度の高い液体であるエポキシよりはるかに扱いやすかった。しかも硬化するのに30分程度しかかからない。混合比率の誤りによる硬化不良以外の不具合は全くなく、うまい具合に仕上がりつつあった。
パテによる中心部の整形
スクリュープロペラのブレード角度は、中心部が立っており、周辺部で寝ている。立ちすぎた角度は、回転時に水を押し出す方向が後ろではなく、外側に向きそうな気がする。これでは効率が悪い。水をいたずらに撹拌するだけだ。だから中心部を円筒形に覆ってしまうことにする。
ここもポリエステル系の樹脂、さっきのパテが使いやすいので、活用することにした。そろそろ400g入りの缶が底をつきそうだったから、1kg入りの缶を買い足した。この時の私はなんて愚かだったんだろう。しかしまだ自分でそのことに気付いていなかった。
工程が次々と進んでいた。パテの仕上がりは上々。水研ぎすることによって、表面はつるつるになり始めた。最後に色を塗ればいいな。何色にするか。シンプルに白にしようか。そう思って白のラッカースプレーを買ってきた。
しかし、ふと、あることに気付いた。これ、重くないか? 重量を測ってみた。2kg近くある。ずっしりと重い。なぜ? 当初2kgほどあったアルミの塊を一心に削り、1kgを切るまでにした。ところがそれに塗装を施したら、再び2kg近くにまで重量が増加した。
それもそのはず。400g入りのパテの缶を使い切り、1kg入りの缶を買ってきて、3分の1ほど使った。これで700〜800g。その前にエポキシを何層にも塗り重ねたから、合計1kgってところか。重くなるのも当然だ。だがこんなもの、シャフトの先端に取り付けて高速に回せないぞ。
愚かな話だ。アルミの腐食防止のために、その表面を厚く樹脂で覆うことを意図し、その通りに作業した。そのことによってどれほどの重量増になるか、私には想像力が欠けていたのだ。
どうする? 決断するのに一晩かかった。答えは出た。撤退だ。この道から引き返す。