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2つの2500C

 アンバサダー2500Cには2つのバージョンがある。オリジナルモデルとインスタント・アンチ・リバース(IAR)モデルだ。そのモデルチェンジの時期をはっきり覚えていない。もしかしたらその途中にパーミングカップモデルがあったかもしれない。3500Cというモデル名だった。そのピカピカのクロームメッキモデルが、近所の釣り道具屋で今だに売れ残っている。
 さて、ここに同色のオリジナルモデルとIARモデルがある。こうして並べてみて、外見だけでどちらがどうとは区別が難しい。

2つの2500C

 もちろんモデル名の刻印が違うので、間違うことはない。(ただし、のちに「復刻」されたものは、IARモデルでありながら、オリジナルを装った刻印がされている。)

刻印

 刻印以外にも区別の方法がある。ハンドルの根元だ。左のIARモデルは、ここにワンウェイローラーベアリングが格納されているので、この部分が太く長い。したがって、ハンドルの高さが若干高い。もっとも、手に取ってハンドルを動かしてみれば、遊びの有無ですぐにわかるのだが。

ハンドル位置

 ともあれ、オリジナルモデルとIARモデルは、互いの比較で、それぞれに長所と短所を持っている。両者は幅広い互換性があるので、両方から長所を集めたチャンポンモデルを作ることも可能だ。今回はそれをやろうと思っている。ただし、ピニオンギアの弱さは両者が共通して持っているので、この問題は改造によって解決する他ない。
 まずはオリジナルモデルとIARモデルが、どこがどのように異なるのか、簡単に表にまとめてみた。

モデル 逆転防止 ギア比 クリックホイール ピニオン クラッチ解除
オリジナル ラチェット 4.7:1 「コ」の字 2ポイント
IAR ローラー 5.3:1 ステンレス 「コ」の字 4ポイント

 基本的には年式の新しいIARモデルの方が優れている。旧型のオリジナルモデルは、ギア比が低いのはいただけないし、クリックホイールが鉄製なのはもってのほかだ。しかし私はワンウェイローラーベアリング方式の逆転防止機構は好きではないので、この部分だけはオリジナルモデルを採用する。
 とすると、メカプレートはオリジナルモデルのものを使用し、そこにIARモデルからギアとドラグを移植することになる。メカプレートに互換性はないが、ギアとドラグには互換性があるので、それは可能だ。
 ところで、私が所有するグレーのオリジナルモデルは、パーツ構成が少々変だ。ハンドルの根元にボールベアリングが装着されているし、ハンドルブッシュ底面のクラッチを解除するポイントが、2つではなくて4つだ。私の認識が誤っているのか? それとも2500Cのマイナーチェンジなのか? あるいはこれはサードパーティ製のアフターパーツなのか? よくわからない。

ボールベアリング

 IARモデルにしたって、私はグレーと緑を持っているが、グレーのメインギアはジュラルミン製、緑のメインギアは真鍮製だ。フットナンバーからの判断では、緑の方が後年のモデルなのだが、どういう経緯で材質が変わったのかは知らない。
 私は1500Cなら新品で販売されていた当時に購入したが、2500Cとなると、オリジナルモデルもIARモデルも、中古品を手に入れて知っただけだ。だからモデル間の差異や、純正パーツかアフターパーツかを、正確に言い当てることはできないのだ。

メインギアの比較

ピニオンギアの形状

 オリジナルモデルでは、メインギアの歯数70、ピニオンギア15で、ギア比は4.7:1だ。IARモデルでは、メインギア63、ピニオンギア12で、ギア比は5.3:1だ。
 ここで気づくことは、IARモデルの方がオリジナルモデルよりピニオンギアの直径が小さいはずなのに、歯数が少ないがために、歯の大きさはギア比の高いIARモデルの方がむしろ大きいことだ。
 ただし、双方ともスプールシャフトとの噛み合いの形状は「コ」の字型なので、どちらが強いかは問題にならない。両方とも削れやすく、長くはもたない。
 しかしその問題をステンレスで補強して解決すれば、ギア比5.3の方が歯が大きくて強いだろう。そしてもちろんギア比が少しでも高い方がありがたい。

ピニオンギアの比較

 そこで、使用するのはもちろん5.3:1のギアセットだ。このうちのピニオンギアを、これからステンレスで補強する改造を行う。

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