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ピニオンギア嵌合部の除去

 2500Cでは、ピニオンギアにシャフトが埋め込まれてあって、シャフトごとスライドするのが特徴だ。これがなぜ独特かというと、5500Cではピニオンギアの中心には穴が貫通していて、ピニオンギアがスプールシャフト上をスライドするのに対し、2500Cは逆に、スプールシャフトに穴が開けられてあって、ピニオンギアのシャフトがそこに出入りするようになっているからだ。
 そこで、2500C独特のピニオンギアのシャフトを利用して、嵌合部を固定するという方針でいく。元のピニオンギアは真鍮製で、嵌合部も一体で作られている。その嵌合部を除去し、ステンレスで作った嵌合部で置き換えるならば、ギア部分と嵌合部をどのようにして固定するかが問題だ。それを、嵌合部をシャフトにカシメることによって、シャフトを介してギアと固定する方法で解決しようというわけだ。
 そのためには、ピニオンギアのシャフトが埋め込まれた嵌合部の中でどのような形状になっているのか、確認する必要がある。そこで、まずは元の嵌合部を除去するところから作業を始める。

ピニオンシャフトの形状確認

 思ったとおりだ。ピニオンギアのシャフトは埋め込まれた部分全部が直径3mmで、スプールシャフトの穴に差し込まれる部分だけが細く、直径2mmとなっている。

ピニオンギアのシャフト

 であるならば、これから作るステンレス製嵌合部の穴を少し小さめの2.7mmとし、3mmの太さのシャフトを無理やり金槌で叩き込めば、強固にシャフトと固定されるのではないか。

ステンレス製嵌合部の材料

 材料はM8のボルトだ。それを長さ5mmに切断し、ドリルで直径2.7mmの穴を開けるために、板に接着する。4つの材料を用意したのは、失敗を恐れてのこと。4つ同時に進めれば、1つくらいは成功するだろうと考えたからだ。そしてあわよくば2つ成功させて、2500Cを1台、1500Cを1台、完成させたい。

ボルト

 穴の位置が微妙にずれるのはいつものことだ。だから周囲を削って穴の位置を中心に調整できるよう、本来は直径5mmで良いところを、わざわざ8mmのボルトから削り出すことにしたのだ。

穴開け

コの字型の削り込み

 ピニオンの嵌合部は、幅3mmのスリットだ。逆にスプール側は厚さ3mmのプレートになっている。よく見ると実際には若干傾斜がつけてあって、ほんの少し先細りになっている。この形状にぴったり合わせるように、スリットは奥がほんの少し狭くなっていなければならない。そのような形状を、ダイヤモンドヤスリでゴシゴシと削り込む。

幅3mmのスリット

くびれの削り込み

 ピニオンギアのくびれは、直径4mmだ。この部分を直径3mmのシャフトが貫くのだから、肉厚は0.5mmの薄いものとなる。ステンレスなら強度的には十分だろう。
 このくびれを、クビキ状の小さなプレートがとらえ、ピニオンギアをスライドさせる。クビキプレートが働くのはクラッチを切るときだけで、繋ぐときにはこのパーツは作用せず、後ろの白いプラスティックのピストンに仕込まれたバネの力でスプールシャフトに押し付けられる。
 ステンレス製嵌合部は、クビキプレートの作用の対象にはならない。クビキプレートが接するのは、ギア部分に対してだけだ。したがってこのくびれ部は、直径4mm以下に作ってクビキの中でスムーズに回転することができさえすれば、OKである。
 作りかけの嵌合部をシャフトに接着し、電動ドリルで回転させながら、ヤスリで削り込んで、くびれを作ってゆく。

 こうして、4つのうち1つは寸法を間違えて失敗したものの、残りは成功し、3つの嵌合部ができあがった。

3つの完成

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