水平線
章頭
次章
目次

新旧の互換性問題

 新旧の2500Cの互換性について、私は誤解していた。ギア比が4.7:1および5.3:1と異なるものの、メインギアとピニオンギアをセットにすれば、無加工の互換性があると思っていた。
 だから、旧型(非IAR)2500Cに、新型(IAR)のメインギア、ピニオンギア、クリックホイールを移植して、問題なく使えると思っていた。
 もちろん、旧型の鉄製クリックホイールと新型のステンレス製クリックホイールでは厚みがずいぶん異なるので、その分ワッシャーを何枚か噛まして調整する必要があるとは思っていた。しかし、実際にはそれだけではすまなかったのだ。
 それは、どんなにドラグノブを締めこんでもドラグが弱く、空回りしてしまうという現象に現れた。その原因は、下の写真のように、メインギアブッシュの根元の形状の違いにあったのだ。

メインギアブッシュ

 左が旧型、右が新型だ。新型の方が全長が長い。それはIAR(ワンウェイ・ローラーベアリング)に厚みがあるためだ。しかしそれだけではない。根元のメインギアが位置する部分(断面が真円)の長さが、旧型の方が長い。私はここを見落としていた。
 つまり、俵型の穴をしたクリックホイールが、この真円部分にはスライドできず、いくらドラグノブを締めこんでも、ここでつかえて、ブレーキ材に圧着しないのだ。
 では、なぜメインギアブッシュにそのような違いがあるのか。それはメインギアそのものの形状の違いのせいだ。

メインギア

 左が旧型だ。ギア中心部の円筒状の部分の背が新型よりも高い。新型ではこの部分が低く、ぺったんこだ。
 では、なぜこのような違いがあるのか。根本的には、クリックホイールの形状の違いのせいだ。

クリックホイール

 左が鉄製にメッキの旧型、右がステンレス製の新型だ。一目見て、旧型の形状の方が立体的で、全体に厚みがある。裏側から見れば、中心部のへこみが深い。逆に新型は薄く、全体にぺったんこである。これがメインギアの形状の違い、そしてメインギアブッシュの形状の違いにつながる。
 あるいは、因果関係が逆かもしれない。新型の厚みのあるIARがハンドルの位置を高くすることを避けようとして、他の部分をできるだけ薄くしようとしたのかもしれない。きっとそれが本質だろう。

互換性問題の解決

 この問題への対策は、それほど大掛かりなものにはならない。クリックホイールがより深くスライドできるように、メインギアブッシュの平面部を拡張すればいいのだ。

 これで、どんなにノブを締めこんでも、ドラグが滑ってハンドルが空回りする現象は、解消できた。

嵌合部の形状調整

 これで、残る問題は、嵌合部の形状を調節するだけになった。クラッチが切りにくい、切れてもスプールがスムーズに回らない、ハンドルの回転に抵抗がある。これらはすべて「コ」の字型の切れ込みが深すぎて発生していると見た。クラッチがつながっている状態では、嵌合部がボールべアリングに接触し、クラッチを切った状態ではスプールシャフトのエッジに接触しているからだ。そしてクラッチが切りにくいのは、「コ」の字型が狭くて、遊びがないことが原因だろう。
 だから嵌合部を削って、形状を調整することにより、これらの問題はすべて解決することができた。

 最終的には、ピニオンギアは次のような形状となった。最新のアンバサダーに倣って、嵌合部の先端は斜めにカットし、より確実にスプールシャフトをとらえることができるようにした。こうすると、キャストの途中でクラッチがつながってしまっても、ギャーッと嵌合部が悲鳴を上げることなく、カッと一瞬で噛み合うのだ。

ピニオンギアの完成

水平線
水平線