高速化の必要性
旧型5500Cのギア比は4.7:1だ。このリールが発売された1970年代の当時、高ギア比を謳って“High Speed”の赤いシールが貼られた。確かに兄弟機5000Cの3.6:1に比べれば高速ではある。しかし、21世紀ともなった現在では、むしろ若干遅い部類に入るだろう。
特に海で使うなら、4.7:1のギア比は遅いと、強く感じる。そのシチュエーションは2つある。打ち寄せる波を超えて、一気にルアーを回収したいとき。そして、大きな魚を掛けたときのポンピングで、魚に隙を与えないように素早くラインを巻きたいとき。そのようなときにはもっと高いギア比が欲しくなる。
反面、高ギア比のおかげでスピードは上がるが、その代償として、パワーが落ちるというデメリットが生じる。その点は海ではあまり関係ない。スピードもパワーもある海の大物をリールで巻き寄せようというのは、そもそも無理な話だからだ。そこで、パワーはロッドが受け持ち、リールはスピードを受け持つという分担が生まれる。すなわちポンピングだ。ただし、ハンドルの回転径が小さいと力を込めて巻きにくいので、ハンドルを少し長くすることによって、そのぎこちなさを緩和しておく必要がある。
もうひとつのデメリットとして、ギア比を高めれば、ドラグが弱くなることがあげられる。ベイトキャスティングリールのドラグは、スプールにではなく、メインギア内部に設置されている。したがって、ドラグが発生する制動力は、ギア比の影響を受けてスプールに伝わることになる。ギア比とドラグ力の関係は反比例である。この点については、逆転するスプールを親指で抑えて、ブレーキを足してやるしか方法はない。逆に言えば、それで対応することが十分できる。
トータルに考えて、高速化は有効なチューニングだと、私は判断する。
ギア比の選択
5500Cを含んで、5000番台の丸型アンバサダーは、現在でも製造販売され続けている。4000番台と6000番台も、スプール幅が異なるだけで、メカニカルな部分はまったく同じだ。
ギアにのみ着目するのであれば、過去から現在に至るそれらすべては、共通の規格によって設計されている。すなわちどの年代の製造であれ、あるいはどんなギア比のものであれ、メインギアの中心とピニオンギアの中心との距離が同じなのだ。
私の知るところ、過去から現在までの丸型アンバサダーのギア比には、次の5種類がある。旧型5000Cの3.6:1、旧型5500Cの4.7:1、新型5500Cの5.3:1、最近の一部の強化モデルの5.1:1、最近の一部の高速モデルの6.3:1。
これら異なるギア比のギアは、メインギアとピニオンギアの中心同士の距離が共通である反面、ピニオンギアの穴の直径と支持部の溝の幅に若干の差異があるため、私の持つ旧型5500Cとは、完全な互換性はない。しかし、多少の加工を施せば、互換性を実現することが可能だ。
したがって、旧型アンバサダー5500Cのギアを高速化しようとする場合、5.1:1、5.3:1、6.3:1の3種類のギア比の中から選ぶことができるということになる。