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EVAパイプの切断

 もし家の中にゴキブリを飼っているなら、グリップの材質の選択は極めて重要だ。コルクのグリップでは、ゴキブリにかじられて、見るも無残な姿になってしまう。夜中に「ジョリ、ジョリ。ジョリ、ジョリ」という奇妙な音を聞いたなら、それはゴキブリが塩分の補給のために、ロッドのコルクグリップをかじっている音だ。あの音を聞くと眠れない。だから私が作るロッドは、グリップはみなEVAでいく。
 フロントグリップ用には、外径33mm、穴径15mm、リアグリップ用には外径33mm、穴径18mmのEVAパイプを使う。両方とも40cmの長さから、必要な分だけをカットする。フロントは13cm、リアは20cmだ。
 EVAパイプを切断するにはコツがある。柔軟で変形しやすいので、カッターでまっすぐに切れない。かと言って、のこぎりだと毛羽立ちすぎる。そこでやはりカッターを使うのだが、EVAを転がしながらカッターの刃を当てると、まっすぐに切れる。切るべき場所にビニールテープを巻くと、切り口がらせん状に移動してしまうのを防げる。
 カットには動力を用いてはいけない。たとえばEVAをドリルに装着して回転させ、カッターの刃を当てるとか。それをやると摩擦熱でEVAが溶けて、カッターの刃にへばりついてしまう。他方、EVAを削るときには、動力を用いて一気にやらなければならない。そのとき布ヤスリを使うが、目の粗い方がやりやすい。EVAは柔軟性があって粘っこい素材なので、粗いヤスリを高速にに当てないと上手く削れないのだ。  

フロントグリップの削り出し

 まずはフロントグリップの大きさと形状を決める。ベイトキャスティングロッドでは、スピニングほど、フロントグリップを使わない。魚とファイト中に、右手はハンドルを巻き、左手はリールをパーミングしつつ、親指でスプールにブレーキを掛けてドラグを補う。ただしこのような場合がある。とんでもない大物とやり合うとき、左手はいつものようにリールをパーミングしつつ、親指でスプールを抑えるが、右手はハンドルを巻くのを諦めて、フロントグリップを握る。その状態で耐えるのだ。これ以外の状況でフロントグリップを握ることはまずない。だからフロントグリップは、こぶしひとつよりも少し余るくらいの長さでよい。形状は、先細り、なで肩の、握りやすいものだ。
 

リアグリップの削り出し

 そしてリアグリップだが、ベイトキャスティングロッドにおいては、その形状が極めて重要だ。スピニングタックルにはない動作、持ち替えがあるからだ。キャスト後にリトリーブするときには、リアグリップから左手を放して脇に挟むだけだが、リトリーブを終えてキャスト動作に入るとき、それまでリールをパーミングしていた左手がすっと伸びて、バットエンドに自然に手を置けるようでなければならない。その動作を導く形状がある。それは「くびれ」だ。女の扱いに慣れた男が、まったく自然な動作で女の腰に手を回すのはなぜか? そこに「くびれ」があるからだ。
 他方、リアグリップの長さは、それほど重要ではない。私はセパレートタイプを多用するが、脇に挟みやすいだけの長さがあれば十分だ。しかし「リアグリップの長さ」という言葉で、リールシートからバットエンドまでの距離を表すのなら、これは重要だ。フロントグリップについての説明で述べたが、相手が大物であればあるほど、左手親指はスプールから離せない。したがって、大物がかかればロッドを握るポジションを変えてフロントグリップを握るスピニングのスタイルと違って、ベイトタックルではポジションは基本的にひとつだ。だからリアグリップはスピニングよりも長く(遠く)なる。私の場合はトリガーからバットエンドまでが52cmだ。ところが市販のEVAパイプは40cmまでだ。長さが足りない。だから私はいつもリアグリップをセパレートタイプにしているのだ。

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