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バットエンド

 バットエンドには3つの役割を負わせる。
 1つは、キャスト時の滑り止めである。したがって滑らない材質がいい。もう1つは、磯で岩によじ登るときにロッドを杖代わりに使う。削れたり裂けたりしないものがいい。そして最後に、ロッドの重量バランスを改善するためのバランサーを格納する。そのために膨らんだ形状にしなければならないが、自由に加工できるものでなければならない。以上の条件をすべて満たすものを思い浮かべる。ゴムがいい。
 その素材を見つけるために、ホームセンターへ行った。2軒目で、おあつらえ向きのものを見つけた。椅子やテーブルの脚にかぶせるゴム製のカバーだ。1件目のホームセンターにはスポンジ製とプラスティック製のものしかなかったが、2軒目にはゴム製のちょうど良いサイズのものがあった。内径27mm。外径40mm。穴の深さ30mm。1個100円もしない安いものだ。
 ゴムは変形するので、削りにくい素材だ。できるだけ目の粗い布ヤスリで、電動ドリルで回転させながら削る。下の動画のようなドリルの使い方は危険だ。何かの拍子に指を巻き込んでしまうと大変なことになる。だから使用するドリルは、小出力(動画の中のものは90W)で低速回転(同 650回転/分)の、家庭用のものを使う。軍手は回転物に対しては巻き込まれて危険だから、この作業は素手でやるのだが、おびただしい摩擦熱が発生して熱くなる。やけどに注意する必要がある。

 この作業に1つ誤算があった。黒かったゴムが、表面を削ることによって、グレーに変わってしまった。塩ビ管のような安っぽい色だ。仕方がないので、トリガーグリップのウォールナットの色に合わせて、焦げ茶色に染めることにした。
 着色はするが、できるだけゴムの質感を残し、厚く塗料を塗りたくない。そんな時に使うのは、断然「染めQ」というスプレーだと、ネット上の評判を知った。試しに「染めQ」を使ってみることにした。確かに謳い文句通り、塗るのではなくて染める感覚だ。反面、着色性は悪く、何度も重ね塗りしなければしっかりと色がつかなかった。そのため、結果的に厚く皮膜を作ることになってしまい、ゴムの質感は損なわれた。それでも、ペンキを塗るよりはるかに良好な結果だった。

バランサー

 私にはロッドの自重を軽くしようという意志はない。それよりも重量バランスだ。11ftもの長さがあるロッドなので、当然先重り感が生じる。そこでバットエンドにバランサーを埋め込み、たとえ自重を増すことになっても、重量バランスを改善するのだ。
 バランサーにはステンレスのボルトを使う。バットエンドに加工した椅子の脚カバーの内径が27mmだった。ちょうどM16という規格のボルトが、頭の六角形部分の対角線が27mmで、ぴったりと収まる。そのネジ部分の長さが30mmのもので、重さが70数グラムある。バランサーとしてちょうど良い重さだ。
 かつて120gもの長いボルトを埋め込んだことがあったが、あれはやり過ぎだった。たしかに重量バランスはすこぶる良好になり、軽く振り回せるようになるのだが、キャストフィールが軽すぎて、スコンと空振りしてしまうような感じになった。あの経験から、バランサーは少し控えめにしておいて、シャキーンというベイトタックル特有のキャストフィールを残しておくことにしている。
 M16という規格は、数字のとおり、ネジの山の部分で外径16mmであることを意味するが、そのままでは太すぎてロッドのバットに差し込むことができない。そこでネジ山を少し削り取ることにする。

バット部のカット

 次に、ブランクにバットエンドを装着すると、バットエンドそのものの厚み5mm、ボルトの頭の厚み10mm、合計15mm、ロッドのバットセクションが長くなる。かたや、ティップセクションもトップガイドを装着することによって5mm長くなる。結果としてバットセクションの方がティップセクションよりも10mm長くなる。そこでバットセクションを10mmカットし、両セクションの長さを揃えることにする。
 カーボンは硬い素材で、金属用のこぎりの歯が滑りやすいので、切断カ所以外にはビニールテープを巻き、誤って傷がつかないようにしておく。
 逆に、ロッドの内側は、製造過程で鉄芯を引き抜くために剥離しやすい何かが使われていて、そのままでは接着剤が効かない。そこでサンドペーパーで傷をつけておく。これを怠ると、ボルトごとバットエンドが抜けてしまう。

バットエンドの装着

 次のような構造にする。ロッドの尻にステンレスのボイルとが刺さって、エポキシ接着剤で固定される。これが骨格である。その外側に、ゴム製のバットエンドが被さっている。ボルトとはエポキシ接着剤で固定されているが、ブランクとは直接には固定されていない。バットエンドの上端は、EVAのリアグリップと接しているが、この2つも直接接着されていない。
 バットエンドの直径27mmの穴の深さは30mmある。そのうち下部の10mmはボルトの頭が占める。その上部20mmが間隙となる。そこを幅20mmに切断した外径27mm、内径17mmのEVAのスペーサーで埋め、ブランク、ボルトの頭、バットエンドと、エポキシ接着剤で接着する。そうすることにより、このEVAのスペーサーが仲立ちとなって、ブランクとバットエンド、リアグリップとバットエンドをも、間接的に接着するのだ。

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