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擬似オフセットの新たな課題

 しかし、私の擬似オフセットは、まだ完成とは言えない。新たな問題が浮上してきている。それまで「手首の角度問題」の陰に隠れていた、「人差し指と中指の角度問題」だ。それは、擬似オフセットに関するトータル6年間の取り組みの結果、とりわけそれが完成に近づいたこの2年の経験の中で浮上してきた、どうにも拭い切れなかったグリップの違和感である。
 下の写真で説明しよう。

人差し指と中指のギャップ

 2本の黄色のライン、すなわち人差し指が握るラインと、中指・薬指・小指が握るラインとの間に、大きな隔たりがある。そのためにグリップがとても不安定だ。端的に言えば、中指がとても握りにくい。いつも遊んでしまう。その結果、しっかりしたグリップが得られない。それはなぜなのか? 時間をかけた考察の結果、今なら明確に述べることができる。
 この問題の存在を理解するために、次のような簡単な実験をしてみてほしい。
 まず下の写真のように、握ったこぶしを、親指を横にして自然に前に出す。

自然に拳を出す

 次に、手首を極限まで右に曲げる。そう深くは曲がらないはずだ。

拳を限界まで右に曲げる

 そして、その手首の角度を維持しながら、人差し指だけをピンと立てる。どうだろうか? 人差し指はすぐさままっすぐに伸びただろうか? 手の甲の筋が張って、十分には伸びなかったのではないだろうか?

人差し指だけを出す

 今度はその逆をやってみよう。同じように手首を右に極限まで曲げておいて、人差し指と中指の2本をぴんと伸ばす。これは困難なくできるだろう。

人差し指と中指を出す

 その状態から、中指だけを閉じてみる。どうだろうか? 人差し指までつられて曲がらなかっただろうか?

中指だけを閉じる

 以上の実験は、私が経験的に感じていた不具合を、人間の手の動きを観察してみることで、理解しようとしたものである。この実験から言えることは、手首の角度による人差し指と中指の動きの制約、あるいは2本の指の連動である。

人差し指と中指のギャップ

 再度最初の写真に立ち返ろう。そもそもこのギャップは、擬似オフセットグリップがブランクスルーでありながら、できるだけリールを低くパーミングしようと意図して、わざと設けたものだった。しかしその意図とは別に、キャスト時のグリップの違和感をもたらしてしまった。結局この2つは並び立つことのできない、トレードオフの関係にある。パーミング時のリールの低さを実現するために、キャスティング時のグリップを犠牲にするか、あるいはキャスティング時のグリップを優先させて、パーミング時のリールの高さを若干我慢するか。
 リールが高くなるとは言っても、パーミング時の左手の位置の基準は中指であり、パーミング時の左手の中指は、キャスティング時の右手人差し指の位置にある。したがってパーミングを犠牲にすると言っても、リールの位置が本当に高くなるのではなく、薬指がリールから遠ざかるだけだ。このデメリットは限られている。ここはやはり、人差し指、中指、薬指、小指が、一直線上を握る形状にするのがよい。

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