型紙の作製
ダブルハンドのロングベイトロッドの、フォアグリップとリアグリップの間に位置する、トリガーの付いた部分を、ここでは「トリガーグリップ」と表現することにする。このトリガーグリップこそは、ベイトキャスティングロッドの最も特徴的なパーツである。そして「擬似オフセット」のコンセプトは、このトリガーグリップの形状に凝縮される。
上の写真は、新世代の擬似オフセットのコンセプトを検証してみるために作った、プロトタイプのスズキ用ロッドである。これを新たな足がかりにするために、できるだけデザインをシンプルなものに抑え、手早く作製したものだ。重要なのはキャスティング時に、人差し指、中指、そして薬指のグリップ部分が、赤のラインのとおり一直線上に位置することだ。このロッド、約1か月間の使用で、その効果を十分に発揮した。今までにない自然なグリップを実現することができたと思う。キャスティング、サミング、パーミング、そして魚とのファイト、そのすべてに高次元のバランスを実現している。
ただし、デザインには満足していない。上の写真の形状には虚飾がある。それはトリガーグリップのテイル部分が無駄に長すぎて、握った時に大きく掌からはみ出すことだ。デザインは機能と融合していなければならないというのが私の持論だ。他人の目を引くようににょっきりと尻を突き出した無様さを容認するいことはできない。ここはやはりアヒルの尻のように反り上がっていなければならない。
何度も紙に描いた。そしてデザインは1つの揺るがないものへと収束した。その姿は1つ。こうでしかありえない。それを方眼紙に実物大で描く。それが型紙になる。
ただし、これはあくまでも作製過程の1中間生成物に過ぎない。きっちり煮詰めすぎないほうがいい。我々は素人なのだから、この型紙を次工程の誰かに渡して、作製を任せるわけではない。そんな分業はない。デザインはあくまでも自分の頭の中から、他ならぬ自分の手の中の現物へと、直接具現化してゆくものだ。頭の中のデザインは完成した揺るがぬものでなければならないが、型紙は目安でしかない。だから後の加工を妨げないように、マージンを残して、ゆったりと大き目(太目)に作っておいた方がいい。
上の動画のように、型紙は何枚も作っておく必要がある。加工の各工程で、何度も型紙を貼り直すことになるからだ。その時は手間を省かず、何枚でも貼り直すつもりでいなければならない。先ほど型紙は目安でしかないと言ったが、では逆になくてもいいのかというと、やはりこれは欠かせない。しばしば加工は細部に注意を要するが、その際に形状や角度の全体像を見失わないようにするためには、大まかにそれを明示してくれるものが必要だからだ。