水平線
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角度の修正

 本来ならこの工程は不要なはずだ。もし一発で垂直の穴をあけることができるのならば。しかしそれができないから、この工程が必要となる。
 ここでやっていることは、あけた穴に対して垂直になるように、水平面を作り直すことである。ここから先、全体の角度や平行や左右の対象といった整形を手作業でやっていくために、できるだけ目を惑わされなくて済むように。なぜなら部屋の照明が左右で対象でなく片側から当たっているだけで、目が影響を受けて左右の寸法が狂ってしまうから。
 まず最初にやるのは、ブロックの中に穴がどのようにあいたのか、視覚化することである。

 次に、それに合わせて、水平面を作り直す。

大まかな整形

 ここから先は大変な力仕事だ。ブロックを削り、頭に思い描いた形を作り出してゆく。それを効率的にできるように、余分な部分を最初にのこぎりで切り落とす。精度を除外して言えば、ブロックを変形させる作業効率の良さは、切る、穴をあける、削る、磨く、の順番だ
 このうち穴をあけるのはドリルの力を借りるから楽なのだが、形が円形に限定されるうえに、機械だから融通が利かない。例えば、切りたい線にそってドリルで無数の穴をあけ、紙に刻まれたミシン目のようにぱっかり切り取ることができないか?などという誘惑にかられるのだが、現実にはまったく不可能である。実は試してみたのだ。「そんなことを思って試してみるなんて、なんてばかなやつだ」とあなたは笑うだろうか? もしあなたの目の前にウォールナット根杢材のブロックがあり、「さあ、これから削るぞ」とカッターの刃をチキチキチキと繰り出したとしたら、次の瞬間には必ず絶望することになる。「これじゃ、何年かかるかわからない。もっと楽な方法はないのか?」。だからいろいろ試してみることになるのだ。そして最後には思うだろう。ウォールナットは手ごわい。やはりここは労力を覚悟して、ちゃんと手順を踏まなくてはならない、と。
 だから、もし私を信じるなら、のこぎりが1番先なのだ。

 両サイドをトリガーグリップの幅に合わせてカットした。もちろんぎりぎりにはしていない。寸法には常にゆとりを持たせる。
 カットの結果、両サイドに張った型紙が失われてしまった。そこでもう一度貼り直すことにする。型紙は常に貼った状態にしておかなければならない。そうしないと作業の全体像を見失ってしまうからだ。そのために型紙をたくさん作ってあるのだ。
 再び型紙を貼って全体像が明らかになったので、余分な部分をのこぎりやドリルで切り取るための下書きができるようになった。このときも、寸法にゆとりを持たせることを忘れてはいけない。

 この状態で、のこぎりの作業を再開する。

 次は曲線的に余分な部分を切り取るのだが、のこぎりは使えない。糸のこならできると思うかもしれないが、相手はウォールナットだ。糸のこのようなたわむ刃では全く歯が立たない。そこでドリルを使う。
 その後、再びのこぎりを使い、パーツをブロック全体から切り離す。

 大まかな作業はこれで終わり、次には精度を追求してゆく。

水平線
水平線