穴をあける工程
このロッドに採用するブランクについては後で詳細を述べるが、この工程で肝心なことは、トリガーグリップの位置でのブランクの直径が15mmであることだ。したがってトリガーグリップには直径15mmの穴を貫通させなければならない。しかも上端には外径22mmのリールシートを埋め込む予定なので、穴の上部15mmだけは直径22mmとなっていなければならない。そのような2連結の穴を今からあける。
この工程が、技術的には最も難しい。意外なことだが、硬い木に深い穴を垂直にあけるのは、相当な熟練を要する。木が硬すぎて、ドリルが暴れるからだ。私には技術がないので、治具の助けを借りる。それでも完全にはできない。だからこの工程を真っ先にやっておく必要がある。もし穴が垂直からずれてしまったら、のちの工程は当初の角度と位置をずらし、それによっ帳尻を合わさなければならないからだ。
まずやるべきことは、ウッドブロックの左右に型紙を張り付けることだ。こうすることによって後の作業を思い描くことができる。
入手したウッドブロックの寸法の制約のために、穴は斜めにあけなければならない。しかしドリルの刃を垂直に当てたいので、まずは水平面を切り出す必要がある。
のこぎりも素人には難易度の高い工程だ。コツがある。まずもって新しい刃を使うことだ。私は常に新しい刃を使うことができるように、替え刃式ののこぎりを使っている。これを怠ると、古くて甘くなった刃では一向に進んでいかず、やがて摩擦で熱が発生し、切り口からかすかに煙が出る。何より危険だし、それに体力を著しく消耗する。もう1つのコツは、材料をしっかり固定して、刃の角度を一定に保ちつつ、ゆっくりとのこぎりを引くことである。そうでなければ切り口が湾曲してゆき、のこぎりの刃が滑らなくなってしまう。実際にやってみればわかるが、ウォールナットはそれほど手ごわい木材である。
水平面ができたので、その面に対し、垂直に穴をあける。穴の奥は直径15mmで向う側に貫通し、手前は直径22mmでその深さは15mmである。いきなりそのような穴をあけるのは難しい。そこでまず4mmの穴をあけ、それを22mmおよび15mmのドリルの刃を導くガイド穴として利用する。22mmのドリルが先で、15mmのドリルが後だ。双方のドリルの先端には直径4mm程度のネジもしくは突起があって、この部分によって4mmの下穴を捉えさせようという意図だから、先に15mmのドリルで穴を広げてしまったら、22mmのドリルを導くガイドを失ってしまう。だから22mmのドリルが先なのだ。
動画で紹介する。まずは直径4mmの下穴をあける工程だ。動画の中で、材料を固定し、ドリルの刃の角度を一定に保つために、なにやら大げさな装置を使っているが、自分でやってみればその理由がわかるだろう。私はロッドビルディングに着手する以前は、木と言えばかまぼこ板か割り箸ぐらいしか触ったことがなかったが、「これが同じ木か?」と思うほど、ウォールナットは手ごわい。
次に直径22mmの穴をあける工程。本来は15mmの深さにあけるべきところ、寸法にゆとりを持たせて、18mm程度の深さにあける
そして最後に直径15mmの穴。これはできるだけ深くあける。モーターに強い負荷がかかるので、より強力なドリルに持ち替え、作業する。非力なドリルでやると、刃が食い込んで回転が止まり、モーターから煙が出る。電極が焼けて、ドリルが壊れてしまう。
以上のような手順を踏んだが、なかなか頭に思い描いたようにはうまくいかない。垂直な深い穴をあけるのは難しい。現に上の動画の結果でも、ドリルの刃が逸れ、やはり穴は斜めにずれてしまった。もっと違った方法を考えなければダメだ。しかし、今はこのやり方でしのぐしかない。もっとも、それが回復不能の深刻な失敗とはならない。のちの工程で、ずれた穴を基準にして作業を進めればいいだけだ。そのために、材料は少し大きめのものを用意しているのだから。