水平線
章頭
次章
目次

右手首へのしわ寄せ

 バックラッシュとの闘いに十分な経験を積んだアングラーなら、それでも意識的にAのグリップを実現しようとする。自分の手首を不自然にひねってでも。その結果、どうなるか?

手首が痛い

 手首の角度が深くて、長時間のキャスティングで、手首の筋が痛くなるのだ。
 ただし断わっておく。シーバスロッドで2〜3時間のキャスティング程度では、手首を痛めるほどには至らない。それを超えるハードな釣りをするのでなければ、このことは大して問題にはならない。
 あるいはまた、サイドキャストを多用することによって、手首の苦痛を緩和することも可能だ。ロッドを振ることに関しては、オーバーヘッドキャストだろうがサイドキャストだろうが、根本的には同じなのだが、サイドキャストは身体をひねって腕の振り幅を補うことができるので、手首への負担が小さくてすむからだ。ただしサイドキャストは、本人の右側に人が立ったり障害物があったりすれば途端に封じられてしまうことに加え、正確なコントロールを要する釣りにはそもそも向いていない。
 さらに言えば、ナイロンラインを使うのなら、それほどシビアなサミングをしなくても、深刻なバックラッシュには至らない。サミングの隙をラインの伸縮が埋めてくれるし、発生初期のバックラッシュが深刻な事態を招くまでの間に、リールのブレーキが余剰なラインを吸収してくれるからだ。だからナイロンラインなら、いい加減なグリップでも、そこそこのキャスティングはできる。しかしPEラインを使うなら、話はまったく別だ。ほんの少しでも油断すれば、パチッという音を立てて、たちまちラインがキャスト切れを起こすことになる。ラインの余剰は微塵も出してはならない。
 結局のところ、どのような緩和策があろうと、問題を根本的に解決しておくに越したことはない。

シングルハンドとダブルハンドの違い

 かつて私は、上述の問題を「ブランクスルーの弊害」と認識していた。「昔のオフセットタイプのグリップなら問題なかったのに」と。しかし、後の考察でその考えを改めた。ブランクスルーでなければ、軽いうえに十分な強度を持ち、なおかつバランスの良いロッドにはならないだろう。ことに10ftを超え、ショアからブリ属に挑むような、ヘビーなロッドにおいては。
 さらにもう1つの考察もあった。そもそもオフセットタイプのダブルハンドグリップは、果たして本当に自然な手首の角度を実現するのだろうか? シングルハンドのオフセットグリップがそれを実現し、実に使いやすかったのと同様に? そんな考察をしてみなければならなかったのは、実は私はダブルハンドのオフセットグリップを使い込んだことがなかったからだ。そしてその考察でたどりついた答えは、否だった。

シングルハンド

 問題がシングルハンドならば、その答えはシンプルだ。上の写真のように、手首の角度をグリップの角度によって補正すればよい。そのために、ブランクスルーが一般的となる前、古典的なグリップは皆そのような形状をしていた。ロッドティップはまっすぐに前方を向かい、グリップエンドはいくぶん体の外側に向かう。
 しかしダブルハンドとなると、少し事情が異なる。その理由は、バットエンドを待ち受ける左手の存在だ。

ダブルハンド

 だから、かつて存在した上のイラストのような、昔ながらのオフセットタイプのダブルハンドグリップは、リールの位置が低くなるためにサミングはしやすくなるが、手首の角度を改善することはないのだ。

水平線
水平線