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バックラッシュと向き合う

 ベイトキャスティングリールはバックラッシュを起こす。それがべイトキャスティング・タックルを使いこなすうえでのハードルとなる。キャスティングにちょっと力が入ると、途端にバックラッシュする。力強いキャスティングとバックラッシュが、あたかも表裏一体であるかに思える。そしてジレンマに陥る。飛ばそうと思えば思うほど、飛ばすことができない。
 もしそんなふうに悩んでいるとしたら、その原因はリールにではなく、実はロッドにある。しかし、その結論を詳細に述べる前に、まずは考えてみよう。バックラッシュはどのようにして起こるのか?

バックラッシュのメカニズム

 バックラッシュは一般に、スプールの回転速度に対して、ルアーの飛ぶ速度が下回ることによって生じる。ルアーを減速させる主な要因は、空気抵抗だ。しかしここではそんな基礎的なことが言いたいのではない。バックラッシュの80〜90%は、それとは別の特殊な要因で発生する。
 それを説明しようとしたのが下図である。キャスティングの動作を表している。想像図なので正確ではないかもしれない。しかし、このタイミングで頻繁にバックラッシュが起こること、しかもこのタイミングでのバックラッシュこそがラインにとって最も深刻なダメージを与えることは、いやというほどの経験で知っている。

キャスティングモデル

 AからDまでは、ルアーの軌跡とロッドティップの軌跡はほぼ一致する。スプールのリリースはCから始まり、スプールは回転運動を始める。Dまではロッドがルアーに運動エネルギーを供給し続け、ルアーがラインを引き出すことによって、スプールの回転を加速させる。Eからはロッドティップの軌跡がルアーの軌跡から大きく逸れ、Fではもはやロッドはルアーにエネルギーを伝えていない。Gではむしろロッドティップはルアーから遠ざかる方向に弾んでいる。
 ルアーが最高速に達するのはEからFの間だろう。他方、スプールの回転が最高速に達するのはGだろう。このときすでにスプールの回転速度がルアーの速度を上回っている。そしてその直後、ロッドティップはFに戻り、その瞬間、スプールからのラインの放出が過剰となる。すなわちバックラッシュである。

避けて通れないサミングの熟練

 この時点でのバックラッシュは、本来、リールのブレーキで防ぐことはできない。それでもリールのブレーキを強めて防ごうとするなら、そのブレーキは強すぎて、ルアーの飛距離を大きく落とすことになる。だからこのバックラッシュは、サミングによって防がなければならない。
 それは言い換えるなら、スプールのリリースのし方ということになる。スプールに過剰な回転を与えず、じわりと加速させる、無駄のないリリース。「パッ」ではだめだ。「ズズッ」とか「ザザッ」。言葉にしようとすると難しいが、アングラーの親指は、経験の中からそれを習得してくれる。ただし親指に他の仕事をさせず、そのような高度なサミングに専念させてやれば、という条件がつく。

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