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アクリル同士の接着実験

 アクリル同士の接着に、意外にもエポキシ系接着剤が有効ではないことには、早い段階から気づいていた。ぺりっと剥がれる。これはショックだった。今までエポキシ系接着剤は万能だと思っていたのに。そこでベストな接着方法を見出す必要が生じた。
 この時点では、プラスティックは作業が容易だと高をくくっていたことが大きな間違いだったともはや気付いていたので、本腰を入れて取り組む覚悟があった。思いつける限りの接着方法を試してやる。
 接着には2つのタイプがある。素材を溶かして(変質させて)接着するタイプと、吸盤のように密着して接着するタイプである。もしかすると、素材に染み込んで(あるいは包み込んで)接着するタイプも、分類としてはありうるかもしれない。どのタイプの接着を行うのかは、接着剤の性質だけでなく、素材との相性によっても変わってくるだろう。知りたいのは、どの接着剤が強力なのかという、接着剤単体の性能ではない。アクリル同士を接着するための、具体的なノウハウが欲しいのだ。
 アクリルに対して、エポキシ系接着剤は、どうやら密着型の接着をするようで、強力な接着は得られない。そこでアクリル表面をサンドペーパーで荒してやってみてはどうかと考えた。あるいは、エポキシ系の接着剤ではなくて、シアノアクリレート系の瞬間接着剤、シリル化ウレタン樹脂系の多用途接着剤、アクリル専用の接着剤、と様々な案が思い浮かんだ。それらすべてを試してみることにした。

 上の動画のとおり、試したのは、シアノアクリレート系瞬間接着剤の「アロンアルファ」(耐衝撃強力プロ用)、シリル化ウレタン樹脂系の多用途接着剤「SU」およびそのソフトタイプ、2液式エポキシ樹脂系接着剤の「Eセット」(90分硬化型)、アクリル専用接着剤「アクリサンデー」である。それぞれに接着面へのサンドペーパー処理をした場合としない場合の2通りを試した。ただし「アクリサンデー」のみ、毛細管現象を利用しての浸透なので、サンドペーパー処理を省いた。
 実験は、アクリルのプレート同士を接着して1日おき、それをはがしてみるという方法で行った。その結果、接着の優劣ははっきりした。接着表面にサンドペーパー処理をした「アロンアルファ」が最も強力だった。接着が剥がれずにプレートが割れたのは、この試料のみだった。したがってアクリル短冊はサンドペーパー処理をしたのち、アロンアルファで接着することにした。
 ところで上記の実験結果は、ネット上に見られる接着剤に関するおすすめ情報とは全く異なる。アクリルの接着には、表面をサンドペーパーで荒した上でアロンアルファを使うとよいとは、私が見たどの情報源も言ってはいなかった。それにはおそらく理由がある。アクリルの最大の特長である、ガラスを上回る高い透明度を生かそうとするなら、わざわざサンドペーパーで表面を荒らすのは愚の骨頂だし、それに加えてアロンアルファは大量に使うと素材の表面を白濁させる性質がある。これではせっかくの美観が台無しだ。しかし、後からどうせ塗装をするのだからと割り切れば、アロンアルファがベストという、他とは異なる結論になるのだ。

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