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スプールカバーの必要性

 シマノのAR−Cスプールのような角度を備えたスプールエッジの装着という発想は、実は、ことのついでに思いついただけで、本来の目的は別にあった。
 カーディナルでPEラインを使うなら、スプール天面にカバーが必要なのだ。さもなくば下の写真のような現象が起こる。キャスト後の巻き始め、PEラインがスプールのボタンに絡みつくのだ。カーディナルが設計された当時、PEラインはなかったか、あったとしても普及していなかったので、PEラインの使用が考慮されていなかったとしても仕方がない。

PEトラブル

 このようなことは、太くて腰のあるナイロンモノフィラメントでは、まず起こりえない。極細ふにゃふにゃのPEラインならではの現象だ。だからPEラインなど使わなければいいのだが、やはり細くて強いラインは魅力的だ。それにアジングに使うとなれば、PEの感度のよさは捨てがたい。
 そこで、スプールの脱着ボタン周辺にカバーを取り付け、このようなことが起こらないようにしたい。そして、どうせそのようなことをするのなら、スプールエッジまでをカバーし、そのエッジに角度を付ければ、AR−Cスプールのできあがりだ。

作製過程

 材料は、厚さ3mmの黒いアクリル板だ。「ラインに擦られるスプールエッジに、アクリルのような柔らかいプラスティック?」などと思われるかもしれないが、アクリルはかなり硬い素材だ。私はかつてアクリル板を使って、ボート用スクリュープロペラを作ったことがあるが、サンドペーパーで削るのに、気の遠くなるような思いをしたことがある。それに、もともとカーディナルのスプールはプラスティック製だ。ここはアクリルで何ら問題あるまい。
 いや、むしろ硬すぎて、コンパスカッターで円形に切り抜くのに大変な苦労をした。カッターの刃で切ろうとしても無駄だ。そうではなくて、コンパスカッターを逆回転させ、刃先の背側で削って掘り進むイメージだ。

アクリル板

 二つの円盤をさらに加工して、天面カバーと、エッジを作った

カバーとエッジ

 エッジにはAR−Cスプールに似せた角度を設けてある。

AR−Cにならって

 二つのパーツを、スプールに取り付けることによって、一体として機能する。

 このあと、たっぷりのアロンアルファを使って、スプールとパーツを相互に接着し、はみ出した接着剤をサンドペーパーできれいに削った。

完成

 12ポンドテストのナイロンモノフィラメントを使って下巻きし、0.6号のPEを巻いた。しかも奮発して、8本編みだ。4本編みの2倍の値段だったが、聞くところによると4本編みよりも8本編みの方がライントラブルが少ないという。だったら、安いのをライントラブルで失うよりも、高いのを長持ちさせた方が、結局コストパフォーマンスがいいのではないか。

完成

 太めのナイロンモノフィラメントで下巻きしたからなのか、中年男のビール腹のように、大きく波打った巻き形状になった。これはしかたあるまい。古い時代のリールだから、オシレートは単純にクランクとコンロッドによるものであり、運動の軌跡はサインカーブを描く。それを等速往復運動に補正する機構はついていない。
 こんなのを目の当たりにすると、最新のダイワやシマノのスピニングリールはすごいよ。アングラーとして歩み始めた最初から、ダイワやシマノを使ったとしたら、ABUなんて使う気にはならないだろう。だけどね、それじゃ、すごいのはリールであって、アングラーじゃない。そこに感動はないんだな。

フィールドテスト

 夜、フィールドテストに行ってきた。何週間も前に「最近、アジが釣れないよ」とは聞いていたが、この日もいなかった。セイゴも留守だった。ただキャストするだけ。まあ、普通にキャストはできるわな。

 問題は、長時間使用すると糸撚れが蓄積されて、ライントラブルが多発するかどうかだが、魚が釣れないのに、そこまでテストする根気は続かなかった。まあ、これから何回か使えば、いやでもわかるだろう。
 そんなことより、愕然とした事実がある。カーディナル33は、リトリーブが重い。ハンドルを回した時に感じる、この粘りのある抵抗は何なんだ。これじゃ、せっかくPEラインを使っても、感度なんて問題にならない。
 アジングのワームが今どのあたりにあるのか、今までのタックルなら、真っ暗闇でもロッドティップに感じる角度の変化で分かったものだが、カーディナル33ではハンドルが重くて指先の感覚が鈍る。なぜこんなにハンドルが重いんだろう? ウォームギアだから?
 でも、私の一番好きなスピニングリールであるカーディナルC3もウォームギアなのだが、ハンドルの回転はとても軽く、わずかな力でくるくる回る。ウォームギアのせいで回転が重く、感度が鈍いなんていうことはなかったのだが・・・。

カーディナルC3

 そういえばカーディナルC3は、ハンドルを回してもジージーラチェット音がしないな。ハンドルが軽いのはそのせいか? そう思ってC3のカバーを開けて中の機構を確認してみた。

カーディナルC3

 すると、カーディナルC3はオシレートが減速されていることに気付いた。33との大きな違いはそれだけだ。ラチェットが無音なのは、つっかえ棒によって爪の動きとギアの動きを連動させているためで、そのことによってはむしろ抵抗が増している。とするとC3はやはり、オシレートの減速によって、軽いリーリングを実現しているのか?
 いや、待て、待て。確かウオームギアは慣らしが必要だって、あのサイトで読んだ気がする。そうだ、私のC3はギアの慣らしが終わった状態にあるのではないか? だから回転がこんなに軽いのだ。大昔だけど、いっとき湖のサツキマスに熱中していた時期があったから。そのころはこのリールがメインだった。今ではベイルのスプリングが折れるのが怖くて使っていないけど。
 だとすると、33も、使い込めばギアが軽くなるのか?

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