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ダイワとシマノのライントラブル対策の考察

 次に行うのは、さらにもう一歩踏み込んだ、ライントラブル対策だ。
 前頁の取り組みにおいては、ダイワのABSにならって、スプールの巻き形状をほんの少し逆テーパーに仕上げた。しかしこれだけでは足りない気がする。なぜなら、ABSを備えたダイワのリールを使っても、やはりライントラブルは発生するからだ。だから今まではダイワのリールでも、少しラインを控えめに巻いて使うことが多かった。というか、張り切ってスプールいっぱいに巻いて釣りを始めても、ライントラブルの結果いくらかラインを失って、自然にそうなってしまうのだが。
 ここにヒントがある。ここから考察を始めよう。
 昔から、スピニングリールでのトラブルを軽減するためには、ラインをスプールいっぱいに巻かず、少し控えめに巻くとよいというティップスがあった。そうしないと、下図のようなことが起こるからだ。

考察1

 だから、こうならないために、特に投げては巻きを繰り返すルアーフィッシングでは、スプールにはラインを控えめに巻くことが推奨されたのだ。それは、ABSもAR−Cスプールもなかった時代の話だ。
 控えめというのは、80%〜90%ぐらいだろうか。今はわざわざそんなことをする人はいないだろう。

考察2

 反面、このやり方だと、キャスティングの飛距離はかなり落ちる。ラインの放出点が下図のようにスプール下端の時はまだいい。

考察3

 しかし下図のように、放出点がスプールの上端のエッジ近くに来ると、大きな抵抗となって、飛距離を落とす。

考察4

ダイワのアプローチ

 そこでダイワは考えた(に違いない)。同じ効果を持ちながら、エッジ近くでいきなり抵抗が大きくならないようにするには、どうすればいいか? そして答えは出た。ラインの巻き形状を、スプールのエッジに向かってなだらかに太くしていけばいい、と。それがダイワのABSだ。

考察5

 これなら、スプールエッジ間際のラインが出ていくときも、いきなり抵抗が増すことはない。スプールのどこからラインが出てゆこうと、抵抗の大きさは一定だ。

考察6

 ただし、常に少しの抵抗がかかるから、その分、飛距離は落ちるかもしれない。しかしそれはトラブル防止の代償だ。

シマノのアプローチ

 同じ頃、シマノはこう考えた(に違いない)。何も逆テーパーにすることはあるまい。スプールエッジを斜めにカットして、抵抗を減らせばいいのではないか? それがシマノのAR−Cスプールだ。

考察7

 これも、スプールエッジ付近での抵抗を緩和している。トラブル防止効果はABSに劣るかもしれないが、抵抗が少ない分、飛距離では勝る。

考察8

私のアプローチ

 そこで私は考えた。ダイワのABSを真似て、スプールの巻き形状を逆テーパーにして、さらにラインを控えめに巻くというのなら、そのスプールエッジの段差を、シマノのAR−Cスプールのように斜めにカットすればどうか? ABS+AR−Cだ。

考察9

 と言っても、なにも33のスプールエッジを削り取ろうなんて思っていない。逆だ。斜めにカットしたリングを嵌めようと考えたのだ。

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