ダイワとシマノのライントラブル対策の考察
次に行うのは、さらにもう一歩踏み込んだ、ライントラブル対策だ。
前頁の取り組みにおいては、ダイワのABSにならって、スプールの巻き形状をほんの少し逆テーパーに仕上げた。しかしこれだけでは足りない気がする。なぜなら、ABSを備えたダイワのリールを使っても、やはりライントラブルは発生するからだ。だから今まではダイワのリールでも、少しラインを控えめに巻いて使うことが多かった。というか、張り切ってスプールいっぱいに巻いて釣りを始めても、ライントラブルの結果いくらかラインを失って、自然にそうなってしまうのだが。
ここにヒントがある。ここから考察を始めよう。
昔から、スピニングリールでのトラブルを軽減するためには、ラインをスプールいっぱいに巻かず、少し控えめに巻くとよいというティップスがあった。そうしないと、下図のようなことが起こるからだ。
だから、こうならないために、特に投げては巻きを繰り返すルアーフィッシングでは、スプールにはラインを控えめに巻くことが推奨されたのだ。それは、ABSもAR−Cスプールもなかった時代の話だ。
控えめというのは、80%〜90%ぐらいだろうか。今はわざわざそんなことをする人はいないだろう。
反面、このやり方だと、キャスティングの飛距離はかなり落ちる。ラインの放出点が下図のようにスプール下端の時はまだいい。
しかし下図のように、放出点がスプールの上端のエッジ近くに来ると、大きな抵抗となって、飛距離を落とす。
ダイワのアプローチ
そこでダイワは考えた(に違いない)。同じ効果を持ちながら、エッジ近くでいきなり抵抗が大きくならないようにするには、どうすればいいか? そして答えは出た。ラインの巻き形状を、スプールのエッジに向かってなだらかに太くしていけばいい、と。それがダイワのABSだ。
これなら、スプールエッジ間際のラインが出ていくときも、いきなり抵抗が増すことはない。スプールのどこからラインが出てゆこうと、抵抗の大きさは一定だ。
ただし、常に少しの抵抗がかかるから、その分、飛距離は落ちるかもしれない。しかしそれはトラブル防止の代償だ。
シマノのアプローチ
同じ頃、シマノはこう考えた(に違いない)。何も逆テーパーにすることはあるまい。スプールエッジを斜めにカットして、抵抗を減らせばいいのではないか? それがシマノのAR−Cスプールだ。
これも、スプールエッジ付近での抵抗を緩和している。トラブル防止効果はABSに劣るかもしれないが、抵抗が少ない分、飛距離では勝る。
私のアプローチ
そこで私は考えた。ダイワのABSを真似て、スプールの巻き形状を逆テーパーにして、さらにラインを控えめに巻くというのなら、そのスプールエッジの段差を、シマノのAR−Cスプールのように斜めにカットすればどうか? ABS+AR−Cだ。
と言っても、なにも33のスプールエッジを削り取ろうなんて思っていない。逆だ。斜めにカットしたリングを嵌めようと考えたのだ。