水平線
前章
次章
目次

微調整

 仕上げに、最後の微調整を行った。それは機関ケースと駆動パネルの2本ずつのシャフトと、それをつなぐジョイントが一直線をなすように、駆動パネルの取り付け角度の調整だった。
 しかしやってみて思ったのだが、これにはあまり意味がなさそうだった。駆動パネルは左右の船体を後部でつなぐ支柱に取り付けるのだが、その板が大きくたわむので、角度が一定には保たれない。それには懸念を感じたが、結局のところ、ジョイントのステンレスパイプもが両者をつなぐステーの役割を果たし、角度は一定に保たれるのだ。ということは、シャフトには回転の力だけではなく、前後へのスライドの力が働くことになる。これで大丈夫なのか? 前のようにパンタグラフ構造を設けた方がよかったんじゃないか?

微調整

 ともかく、微調整はこれでよしとしよう。最後に、乗船してペダルを漕ぎ、プロペラを回してみた。

 プロペラは回るし、舵も働く。しかし、空気中で回してさえも、ペダルは重い。ギアの数が多くて摩擦抵抗が大きいのと、プロペラへの空気抵抗のせいだ。しかし、いったん回り出すと、ペダルを漕ぎ続けるための力はそれほど必要ではない。やたらペダルが重いのは、漕ぎ出しだけだな。

組立

 2019年9月25日。進水式をこの日と決めた。
 ボートを分解した状態で車に積み込んだ。軽のワンボックスカーに余裕はないが、前回の失敗作ほど無理に積み込んだ感はない。

車載

 私のボート作りを応援してくれている近所の解体屋の社長が、進水式を手伝いに来てくれた。彼は日ごろから言うのだ。「おれは壊すの専門だから、作る人には感心する」。彼は私のことを「発明家」と呼んだ。私は彼のことを、社員思いの、いい社長だと思っている。
 午後2時。組立てを始めた。前回の失敗作では、組立てと分解にそれぞれ1時間半かかった。しかし今回はずいぶん短縮して、たったの20分だ。
 下のビデオは組立ての工程をカットなしで撮り続けたものだ。それを5倍速で編集した。アクションカムを頭につけていたので、映像はぶれている。その必要がない人は観ない方がいい。目が回るから。

出航

 待ちに待った出航だ。波打ち際から、ボートを後ろ向きに押出し、乗った。

 結果はご覧の通り失敗だ。バックで岸を離れるときにすでにガガッと嫌な音がした。それでもそのまま漕いだら、前進でもガガッと異音がした。音とともに足に異常が伝わる。明らかにギアが空回りしている・・・。
 くそっ、なんてこった。前回の失敗作では20分。今回はほんの数秒しかもたなかった。沖に出る前に引き返そう。そう思ってパドルを手に取った。
 両側にブレードを備えたカヤック式のパドルは正解だった。これで随分と漕ぎやすくなった。前回のカヌーのようなブレードがひとつだけのパドルでは、船体がくるくる回るばかりで一向に前に進んでいかなかったが、今回はちゃんと前に進んでいく。それだけでも救いとなってくれた。
 さあ、ここからどうやって立ち直ろうか?

水平線
水平線