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レブロスのオシレーションの仕組み

 カーディナルのオシレーションの仕組みが意外に原始的であることに呆れた私は、他社のスピニングリールのオシレーションに、俄然興味が湧いた。そこで次に、ダイワのスピニングリールを検証してみよう。レブロスMX2506だ。

レブロスの巻き形状

 スプールの巻き形状は、ABS特有の先太りで、ほぼ平坦に巻かれている。しかし、このレブロスも、キャスト時のライントラブルは少なくはなかった。とはいえ、スプールの巻き形状がその原因となっているとは思えない。レブロスのライントラブルのほとんどは、スプール周りで起こったのではなく、ラインがガイドに絡んで発生したからだ。スプール周りでのライントラブルが起こらない理由は、先太りのABSの効果と併せて、巻き形状にカーディナルのような大きな凸凹がなく、きっちりと平坦に巻かれているからだろう。

「S字カム」の考察

 それで、このリールのオシレーションはどのような仕組みで機能しているのか?

S字カム

 ふたを開けてみて、すぐに気付いた。あ、これは「S字カム」というやつではないのか? 裏側から写真に撮っているのでわかりにくいが、スピニングに疎い私は怖くてこれ以上分解できないので、表側からの撮影は諦めて、代わりに「S字」の部分を赤く示しておいた。
 しかしこの「S字カム」が、本来コサイン曲線を描くはずのオシレーションを補正し、等速往復運動を実現しているのはなぜだろう? 等速往復運動だと私が言うのは、そうでなければ、あのような平坦な巻き形状にはならないからだ。そして、きっとそれは「S字カム」の補正機能に違いないのだ。そのことを理解するために、図に描いて考えてみた。

補正の検証

 上の図は、ギアの1周を20等分し、分かりやすいように、左右半分ずつに分割したのを並べたものだ。円がオシレーション用に減速されたギアを表し、点がクランクの支点、赤い線が「S字カム」の片側半分を表している。この図を眺めて、なるほど、これは単純なクランク運動ではないとわかる。
 次に、これを、下図のような単純なクランク運動、コサイン曲線を描くオシレーションと、比較してみよう。

補正なしとの比較

 この比較から言えることは2つだ。
 確かに「S字カム」による補正は効いている。明らかに、スライド幅が均等に、すなわちオシレーションが等速に近づいている。
 しかしその方法は、上端近くもしくは下端近くでスライド幅が小さくなるのを、カムに傾斜をつけることで、両端方向へ押し広げることによってである。その結果、全体的にスライド幅が均等になってはいるが、両端ではそのしわ寄せのため、むしろ逆に極端にスライド幅が狭くなっている。ここでは等速どころか、極端に減速し、停止に近い。
 とすると、スプールへの巻き形状は、下図のようになるはずである。

補正後の巻き形状予測

 ところが、実際には上図のように上端と下端で極端に厚く巻かれることなく、スプールいっぱいにきっちり平坦にラインが巻かれる。なぜそのようなことができるのか? オシレーション速度の、上下端での極端な減速を、どのように処理しているのだろうか?

スピニングリール巻き形状調整の常套手段

 ははぁ、さてはあれをやったな? そう思って、測ってみると、やっぱりだ。
 レブロスのオシレーション幅は15mm、かたやスプールの上下幅は16.5mm。スプール幅の方が1.5mm広い。こうすることによって、上下での減速によるラインのだぶつきを逃がし、結果として平坦で均一なラインの巻き形状を実現しているのだ。
 だからレブロスの補正は、「S字カム」とスプール幅の調整の、2つの方法の併用と言える。「S字カム」にばかり目が行きがちだが、割かし原始的な手段も併用されているんだな。

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