船体の材料
船体を何で作るか?
これは私にとって初めてのボート作りだ。これで行けばこうなるという経験による知識がまったくない。だから、経験がなくても、絶対に失敗のないもの。すなわち、多少の製作ミスがあっても、あるいは操船中に何らかのアクシデントに見舞われても、絶対に沈まないもの。しかも身近に、ホームセンターで売っているもの。それは発泡スチロールだ。
そう狙いを定めて、発泡スチロールについて研究してみた。するとこの素材には明確な特性があることがわかった。押す力に対してはめっぽう強いが、引き剥がす力に対してはとことん弱い。だからよく海岸に打ち上がっている樽型のブイのような大きな塊だとまず破壊されることはないが、長細い形状にすると簡単に折れる。
しかし、その欠点を補う方法がある。それが下の動画である。
発泡スチロールの棒は、ほんのわずかな力でパキンと折れる。なぜなら、曲げようとする内側には押しつぶす力が、外側には引き剥がそうとする力が働き、外側から裂けるのである。そこで、曲げようとする外側にセロテープを一枚貼って補強することにより、どんなに曲げても折れなくすることができる。
要するに、発泡スチロールの表面を強固な皮膜で覆えばいいのだ。ボート作りでは、通常はそのような目的には、ガラス繊維で強化したポリエステル樹脂を使うのだが、それをやると捨てる時に困ることになる。自治体のごみ回収から拒否されるため、いつまでも野ざらしにするか、高い費用をかけてFRP専門の廃棄業者に委託することになる。だから私はペンキで紙を幾重にも塗り固めることにする。いわゆる張りぼてだ。
船体の構造
しかし、上述のようなものだと、折れないにしても、剛性は期待できない。波を受けてぐにゃぐにゃと曲がるのではないか。やはり骨格となる芯材が必要だろう。
そうとなれば、やはり木材だ。でも無垢の柱では重くなりすぎるから、板をL字型に貼り合わせて、強度と軽さを両立させよう。それを下図のように発泡スチロールで覆えばいいのだ。
骨格の完成
骨格を完成させるのに、数カ月を要した。
前後の2分割式で、ボルトとナットで組み立てる。それが左右に2つ。したがって、船体は4分割式だ。半分で、軽のワンボックスカーの荷室になんとか収まる長さの180cm。それを2つ繋いで、船体の全長は360cm。組み立ててみると、軽自動車よりほんの少し大きい。
この4分割された船体が、浮力を担う。その断面は、1辺33cmの正方形。1つ当たりの浮力体は、長さが180cmあるので、まずは幅33cm、高さ33cm、長さ180cmの直方体となる。そこから流線型に削り込むとしたら、体積は半分以下になる。とりあえず3分の1として計算してみよう。するとその浮力は、4本全体で・・・
33cm×33cm×180cm÷3×4=261,390立法cm
すなわち約260kgとなる。海水の比重は1よりも大きいから、260kg以上だ。ボートの自重と私の体重を併せて260kg以下なら、ボートは浮かぶ。