外径30mmのステンレスリング作製
2500Cのブレーキドラムの内径は、1500Cと同じく、30mmだ。もし、外径30mmのステンレスパイプが手に入るのなら、簡単にそれを輪切りにして、装着すればこと足りる。しかし、ホームセンターで売っているステンレスパイプは、もっとも寸法の近いものでも、外径32mmで、おそらく内径が30mm程度なので、外周を削って外径30mmにすることができない。
そこで、かなり大掛かりな作業となってしまうが、ステンレスの塊から、外径30mmのステンレスリングを切り出さなければならないのだ。幸いなことに、ホームセンターでは下の写真のような外径30mm、幅9mmのステンレス製車輪が手に入るから、その内側だけをくりぬけば、外径30mmのステンレスリングを切り出すことができる。まあ、それとて大変な作業ではあるのだが。
フレームはひん剥いて、中の車輪だけを使う。
取り出した車輪の内側をくりぬく作業は、車輪を台に固定し、電動ドリルに装着したホールソーで行う。ホールソーは手持ちの直径26mmのものを使った。すなわち26mmの穴が開けられるということだ。
こうして、外径30mm、内径26mm、幅9mmの、ステンレスリングが切り出せた。
内径を拡大して、リングを薄くする
次の作業は、現時点では厚さが2mmもあるリングを、内側から削って、極力薄くする作業である。厚さが2mmあるからと言って、遠心ブレーキに何か支障があるわけではない。それでも極力薄くしたい理由は2つある。
まずは重量だ。現時点で、厚さ2mmのリングはずっしりと重い。ただでさえ重い2500Cをさらに重くするのは得策ではない。
もう一つの理由は、ブレーキブロックを保持しているシャフトを短くしなければならないのを、最小限にとどめたいことだ。2500Cのブレーキブロックはとても小さい。それでも回転中にブレーキドラムとシャフトの隙間へ脱落しないのは、この隙間がぎりぎりの紙一重しかないからだ。そこへ厚さ2mmのリングを嵌めたら、もちろんシャフトがつかえて、スプールが土手の中に入らなくなる。そのためにはシャフトの左右を2mmも削らなくてはならない。しかし削るという作業は、やり過ぎた場合にもとに戻せない。だから極力削る量をわずかにとどめたいのだ。
しかし、そのためには、ステンレスリングの内側を削って内径を拡大するという、手間のかかる作業を実行しなければならない。ヤスリ、グラインダー、サンドペーパーを使って、根気よくやるしかない。
これで、リングの外径は30mmを保ったまま、内径を拡大することによって、厚さ0.3mm程度まで薄くすることができた。
リングの幅を3mmぐらいに、輪切りにする
このリングは、遠心ブレーキドラムの内側に張り付ける。ドラムはスプールの土手を兼ねているが、この土手は深さ(あるいは高さというべきか)が5mmある。そのうちスプールの縁が収まるのは1.5mmほどで、残りの3.5mmほどは遠心ブレーキのために使われる。遠心ブレーキのシャフトは、スプールの縁から2mmほど浮いている。
ということは、もしリングの幅が3.5mm以上あるなら、スプールの縁に接触するか、もしくはスプールが入らなくなる。逆に、幅が2mm以下だと、ブレーキブロックがリングに当たらない。ちょうどよいのは3mm強といったところだ。
現状ではリングの幅は9mmあるので、これを幅3mm強に、輪切りにする。
このような作業を経て、2つのリングが切り出せた。必要なのは1つだ。もうひとつは別の機会にとっておく。
遠心ブレーキのブロックシャフトを削る
これで、リングはブレーキドラムの内側にすっぽりと装着することができるようになった。
しかし、そのためにドラムの内径が30mmから29mm強に狭くなった。リングの幅を調節して、スプールの縁が入り込む余地は残してある。問題はブレーキブロックのシャフトが入らない、もしくは入ったとしてもリング内壁に接触することだ。
この問題は、シャフトを削ってほんの少し、リングの厚みの分だけ短くすることで、簡単に解決する。ただし、短くし過ぎるとブロックがドラム内で脱落することになるので、注意が必要だ。
リングは瞬間接着剤で固定した。組み立て終わってハンドルを巻いたときに若干の引っ掛かりを感じたのだが、原因はドラム内壁に付着した瞬間接着剤の滴だった。それは簡単に爪で除去できた。
これで作業は終わりだ。設計は単純で、作業量ばかり多くて、わくわくするような刺激の少ない、地味なチューニングだが、これでまた復活したアンバサダー2500Cでヒラスズキ釣りができるのはうれしい。
今までつなぎで使っていたレボは、決して悪くないリールだが、私はやはりフルシンクロレベルワインダーのリールが好きだし、なによりアンバサダーの端正なフォルムが好きだ。