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製造工程の改善

  トリガーグリップの一部であるリールシート部にEVAを使用するのは、一面ではパーミング時の滑り止めのためなのだが、もう一面では、この部分に蓋が必要だからだ。この中には、富士のパイプ式リールシートの先端部のみが埋め込まれている。だから段差ができるのを嫌ったとしても、木の素材で一体に削り出すことが不可能で、何らかの方法で蓋をしなければならないのだ。

埋め込み

 蓋をする必要があるとしても、それだけでは、蓋をしてから削っては都合が悪いことにならない。問題なのは、木製のトリガーグリップ、パイプシートの先端部、そして蓋となるEVAの滑り止めの3つを、それぞれ直接ブランクに接着することによって固定していたことだ。
 ブランクに接着した後の工程では、絶対に失敗ができない。なぜなら、一度強固に接着したものを、ブランクを破損させずにやり直すことができるとは限らないからだ。だから今までは、ひとたびパーツをブランクに接着したら、その後に何らかの加工を施すのを極力避けたのだ。
 しかし、この問題は次のようなやり方で克服することができた。
 ブランクの代わりに、コピー用紙を丸めて同寸のパイプを作り、そこに接着する。パーツ同士は強固に接着されても、紙パイプは後から除去することができる。たとえエポキシ接着剤で強固に接着されたとしても、無理やり引っこ抜き、接着部に残った紙の破片をサンドペーパーで削り取ることができる。
 そうすれば、接着後、固定された状態で継ぎ目を削ってから、そのままブランクに挿してユニットごと接着することができる。こうすればパーツのずれは絶対に起こらない。

紙パイプ

煮沸実験

 上記の実現のためには、もう一つ、工程の変更が必要になる。木部への樹脂含浸は、サンドペーパーで整形した後で、仕上げに行わなければならない。つまり、エポキシ接着剤で木部とEVAを接着した状態で、樹脂含浸の工程すなわち100℃で30分間の加熱を行わなければならない。
 EVAは100℃の温度に耐えるのか? エポキシ接着剤は? また富士のパイプシートは? 収縮したり溶解したり変形したりしないか? この点については端材を使って実験してみた。

実験

 写真のものは、すでに30分間、ジップロックに入れて煮込んだ後のものだ。木部に水分の染みができているだけで、接着部分、EVA部分、パイプシートには、何の異常も見られない。これで確認できた。まず接着、次に整形、最後に樹脂含浸して、ブランクへの接着。この工程の順序でOKだ。

水平線
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