田舎には田舎の暮らしがあり、このコロナ騒ぎの中でも、まったくのどかなものだった。人混みなんて、この町では探しても見つからない。だから騒ぎが始まったころは、何の心配もなく、釣りに行っていた。
様相が変わったのは、緊急事態宣言の直後だ。今に至るまで一人の感染者も出していないこの町で、唯一の感染経路は都会からの来訪者だと予測された。そこで市の役人たちが行楽客を締め出すためにあちこちの広場や駐車場を閉鎖し、毎日防災無線で市長のメッセージ「来るな、呼ぶな、帰ってくるな」を放送した。ところがこんな時に県外からやってくる人たちは、そんなのお構いなしだ。結局締め出しを食らったのは、むしろ市民のほうだった。
釣りもダメ、バイクに乗るのもダメ。仕方がないから日々ガレージにこもって、ボート作りに精を出した。おかげで作業はずいぶん捗った。
そして、やっと緊急事態宣言が解除された。そりゃ、釣りに行くでしょ。
久しぶりの海。海ってこんなに青かったっけ。波ってこんなに白かったっけ。フィールドに立つって、実にいいもんだねぇー。ま、チビしか釣れなかったんだけど・・・。