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 久々にヒラマサの再開。平日だから一級ポイントが空いていた。それでも私はアクセスの悪い二級ポイントに入った。きっと後から来た人が一級ポイントに入るだろう。だから私は先回りして、バッティングを避けたのだ。
 1時間ほどキャストして、ノーヒット。トビウオがとても少ない。一度水面でスプラッシュさせたペンシルにじゃれついてきたきりだ。
 日が昇り切ったころ、渡船がやってきた。いやな予感。あの渡船屋の客たちは異口同音に同じことを口にする。
 磯に降り立ったのは3人の石鯛師たち。私の真後ろに展開し、案の定、リーダー格の男がやってきて、自分たちがそこでやるから出て行けと言う。
「われわれはお金を払ってきているんだから」。それが彼らのいつもの決め台詞だ。私は「あ、そう」と言って退散した。
 彼らの言い分に理があると思って引いたのではない。彼らが渡船屋にいくら払ったのかなんて、私の知ったことではない。それでも譲ったのは、渡船屋とのトラブルを避けるため、そしてこういう薄気味悪い連中と並んで釣りをしても楽しくないからだ。
 一級ポイントがまだ空いていた。最初からここでやればよかったんだ。こっちの方が潮がよく動いてる。それとも下げに入ったからか?
 その1時間半後、ヒット! しかしそこでアクションカムの電池切れ。ランディングまでは映っていなかった。釣れたのはヒラマサじゃない。いつものあの魚だ。結局それっきり。
 ところで、あの3人はああまでして、釣れたのだろうか? それとも釣れなくて、天に向かって悪態でもついたか。
「われわれはお金を払ったのに、なんで釣れないんだ」。
 すると、天の神様はこう答えたか。
「釣らせてほしければ、渡船屋にではなく、私に金を払え!」と。
 そんなわけないよね。神様はただ黙って、万物を日の光で照らすだけだ。

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