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 ごついタックルを持ち出して、力まかせのファイトで、より大きな魚をねじ伏せようというのは、私の美学に反する。それだと、極論すれば、最高の釣りは捕鯨だということになる。そんなのはいやだ。実は私は一度そこにはまり、釣りの楽しさを見失ったことがある。あんなことはもう繰り返したくない。
 だから私は、一定のスタイルで自分の手を縛り、力ではなく、技で勝負したいと願う。そう思って、昨年からタックルのパワーを一段落とし、リールも5500Cでいくことにしたのだ。
 そうなれば「柔よく剛を制す」技がぜひとも必要となる。そこで考えたのが、「魚のパワーを、魚自身を疲れさせるために利用する」という戦術だった。私のコントロール下で魚を疾走させ、沖で疲れさせることによって、手前に寄せてきた時には大人しくさせる。そんなことができないか?
 ところが私の失敗は、そこに拘るあまり、この魚に対して判断を誤ったことだ。魚が沖にいるときには走らせるという戦術はありだろう。では近くでヒットしてすでに魚が目の前にいるときは? いったん沖に走らせるのか? 先週はそれで失敗した。わざわざドラグを緩めて魚を自由にした。で、ラインを根に巻かれたのだ。今日はドラグを緩めはしなかったが、スプールの逆転を止めて強引に巻きもしなかった。挙句、魚は下に突っ込み、根にルアーを引っかけて、根化け・変わり身の術、自分は自由になったのだ。ちっ、またこれにやられた。
 要するに私はパワーで負けたのではない、技で負けたのだ。だから悔しい。

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