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モンブラン

 職場で発生した大事件。それは8月1日だった。しかし私がそのことに気付いたのは8月3日。8月4日にはいかに取り返しのつかない深刻な事態であるかが明らかとなった。もはやこの段階では赦しを請うて祈るしかなかった。
 連日の猛暑の中、休みなく対応に当った。釣りどころではなかった。そのころショアから盛んにシイラが釣れていたが、行きたいとは思わなかった。皆、疲弊していた。携わった少数の者たちは互いに労り合った。それはいいチームだった。
 ここで局面が変わると判断した8月10日、「明日はお休みをいただきます」と宣言した。多少の残業を片づけて駐車場に下りると、同じく帰ろうとしていた若い女子社員が「これあげるぅー」と差し出した。何かと思ったら、べろべろに溶け崩れたモンブランだった。社長からの労いの言葉もありがたいけど、こういうのもまたいいな。釣りにはまだしばらく行けないかもしれないけど、私は満足することにした。

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