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マストの立て方

 マストの材料は、直径32mmのアルミパイプだ。ホームセンターで見つけた。アルミだと割と軽い。4mの長さで買えたが、軽のワンボックスの車内に積むには2.4mの制限がある。購入後、店の駐車場で2.4mに切った。
 このマストを、船体のどこに立てるか。釣りの邪魔になるのは困る。キャスティングで針を引っかけてしまわない場所。船首の先端しかない。前に向いてはキャストしないから。そうすると、自ずとブーム(帆桁)の長さも決まる。アルミパイプ4mのうち、マストにする2.4mの残り、1.6mがちょうどよい。
 船首にブリッジを渡して、その中央に立てる。でもそれだとマストは横方向の力には耐えるが、前後方向には弱い。だからアルミパイプをもう1本買って、ブリッジのつっかえ棒にした。そうすると都合のよいことに、このつっかえ棒にセンターボードを取り付けることができる。

ブリッジ

 センターボードは、バネの力で持ち上がっていて、出航時には邪魔にならないようにする。沖に出てからロープで引っ張ることによって、海中に下ろすのだ。
 セールはビニールシートだ。視界を遮らないものがいいと考えたからだ。しかし、裂けないように補強の入ったものを使ったら、その分透明性は損なわれた。

マストとブームとセール

セーリングテスト

 セール作成の作業には何ら難しい点はなかった。ギアを組んだりプロペラを設計したりするのと比べれば、実に単純な作業内容だ。1週間程度で完成した。
 11月15日、セーリングのテストをするのにおあつらえ向きのいい風が吹いた。この日、さまざまなテストを行った。

 

 帆がパンと張るには、風速3m以上の風を必要とする。4mあればなおいい。それは、セール化以前には、出航を躊躇するような風だ。その意味では、セールは頼もしい。
 しかし、セールの推進力だけでボートを進めるには、力が弱すぎる。ましてや向かい風の中、風上に向かって進めるかは微妙だ。海面に浮かぶ泡に対しては進んでいるように見える。しかし泡は風に吹かれて風下に流されているはずだ。ボートが進んでいるかどうかは、固定された目標に対して近づくかどうかで判断しなければならない。そういうテストもしてみたが、向かい風では横に流されるばかりで、前に進んでいるとは言い難い。
 これが、真横の風なら、明確にボートは進んでいるとわかる。しかし、それとて、とても実用的な速度は出ない。結局のところペダルも漕いで、セールとプロペラの併用で運用してゆくしかない。そういうふうに割り切るなら、向かい風も含めて、セールは足への負担を軽減するアシスト的な貢献をしているとは言える。
 ただし追い風でもない限り、セールが風を受けると、横流れも激しい。センターボードが十分に働いていない感じだ。とすると、こんなことが生じる。向かい風の中、斜め45度にジグザグに進んでいこうとしても、思いのほかボートの横流れが大きく、結果として非常に大回りをしながら目的地を目指すことになり、セールのアシストを受けてペダルは多少軽いものの、余計に時間がかかって、決して楽はできていない。

セールの問題点

 なぜこんなことになるのか? それは簡単なことだ。セールが小さすぎるのだ。ヨットにしろ、ウィンドサーフィンにしろ、なぜあんなに高く帆がそびえ立っているのか。それはよりたくさんの風を受けるためだ。そうやって多くの風を集めなければ、力が弱すぎて推進力にならないのだ。少なくとも帆の推進力が、船体の受ける風の抵抗をほんのわずかでも上回らない限り、ボートは風上には進まない。
 私のボートは帆が小さすぎて、十分な推進力を得ていない。そのことがもう1点、重要なマイナスを引き起こしている。風の力でゆっくりとボートが進んでいるとき、その速度があまりに遅すぎて、舵が効かないのだ。その結果、船首が風下に回り、コースを逸れてしまう。そうさせまいと舵を大きく切ると、船首と船尾の両方で風下に向かい、ボートはどんどん横に流れてしまう。その原因はマストの位置にある。船首にマストを立てたために、横方向の力がボートを回転させてしまう。よほど大きなセンターボードを備えなければ、この問題を抑制できまい。
 これらの問題を解決するためには、もっと帆とセンターボードを大きくしなければならない。そこで悩ましい問題が持ち上がる。現時点のセール化のために、ボートの重量は約10kg増大した。セールなしで約60kg、セールを付けて約70kgだ。もっと大きな帆とセンターボードを備えるなら、その重量増は20kgほどになるだろう。そうするとボートの自重は約80kgにもなる。果たしてこの方向性は正しいのか?
 第4期の取り組みにおいては、ボートの自重をぎりぎりまで削ぎ落したい。目標は40kgを切ることだ。だから第4期では帆を備えるべきではない。しかし、この第3.5期では? 帆にこだわって、セイリングの性能を追求してみるか? それとも、さっさと第3.5期を切り上げて、第4期へ移行するか? そこが考えどころだ。

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