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 完成したペダルボート。先週のテストではその性能の低さを目の当たりにしたが、それでも湾内の潮目付近でねちねちとナブラを追いかけ回すぐらいのことはできる。これだけ小回りが利いて、あっちだこっちだと変幻自在に出没するボイルを追いかけることができるのなら、船足ののろいこのボートも捨てたもんじゃない。
 ボイルの主はイナダだと思う。なけなしのワンヒットをばらしてしまったから、魚の姿を見ることはかなわなかった。この季節、イナダは湾内の広範囲でボイルする。しかし、ルアーにヒットさせるのは難しい。本物のベイトに狂ったら、群で一斉にそれだけを追いかけまわして、ルアーには見向きもしない。それでも夕暮れには一瞬のチャンスが訪れた。
 午後5時の時報が流れた直後、密集したボイルがばらけ、広範囲に広がった。なぜかいっとき、群を解いた魚が個々にベイトを追い回し始める。そのときだけルアーへの反応があった。
 ヒット!
 なのに私はしくじった。悔しい。しかしこれから面白くなってきたぞ。私のこのボートで立ち向かおうじゃないか。

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