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 一昨日、社内のライバルが言った。
「おれ、年が明けてから一匹も釣れてませんよ」
「そうかね、そうかね。ま、焦らなくても、そのうち釣れるよ」
 私はタチウオも、ヒラスズキも、マルスズキも釣ったぞ。ぷぷぷ。なんだ、この心地よさは?
 ところが、今日、ライバルはこう言ったのだ。
「昨晩、やっと釣れましたよ。81cmと50cmちょいでしたよ」
「ほぉー。私は昨日は出張で、釣りには行けなかったよ」
 そんな時に釣りやがって。しかも80オーバーだと? なんなんだ、この悔しさは。
 よし。今晩、勝負をかけてやる。天気は雨。気温が下がって、とても寒い。こんな日に釣りをするバカはいないだろう。でも、そこが狙い目なのさ。
 重装備に身を固めた。ジーンズの下にジャージ。その上にウェーダー。その上からワークマンのぽかぽかジャンパー。左右のポケットにホッカイロ。それでも冷たい雨風は身に堪えた。
 案の定、ビーチに人影はない。思い通り、広範囲に探れる。潮は右から左に強く流れている。離岸流がそれを沖に向かって押し曲げる。潮目がL字型にくっきりと浮かび上がった。その曲がり角に魚はいた。
 2連発。しかしその後が続かない。潮目を見失い、ポイントは消失した。
 サイズはいまいち。79と74。これではライバルに勝ったとは言えまい。だから今日の釣果は、ライバルには伏せておこう。
「あ? 行ってないよ。雨降ってたじゃん。この寒い中、バカじゃあるまいし。いや、行けば釣れるさ。80オーバー連発だよ。だけどこれからしばらくは雨だからねぇ。残念だけど、当分、釣りはお預けだね」

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