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 サクラマスへの道、その4。
 昼までは晴れていた。ビーチのマルスズキも、磯のヒラマサも、きっちりやった。だけど、ノーヒットだった。あるよね、こういう、どこへ行っても魚がいないっていう時期。夕方は再びビーチのマルスズキか?
 午後になって雨が降ってきた。結構強く降りだした。こういう時はバイクの練習でしょう。晴れれば釣り、降ればバイク。ちょっと変?
 真剣に考えていたのだ。渋滞と並んで時間を浪費する迷子を何とかしなければ。距離を伸ばせない理由はそこにある。ま、もともと方向音痴だし、知らない道を走るんだし。でもね、気づいたのさ。なぜこんなにも迷子になるのか。それはUターンができないからだ。この道は違うと気付いたとき、Uターンできないからそのまま進んで、遠回りでもと来た道に合流しようとする。ところがそうは上手くいかない。ますます外れて行ってしまう。
 意外なことに、Uターンはライディング技術の中でも、最高度の難易度なのだ。自動車学校でもできなかった。教官が私には無理だからと、「小回り」という教習課程を飛ばしたのだ。それは必須ではない、卒検にも出ない課題だった。私は思った。「『小回り』って、いったいどんな技なんだろう?」。なんのことはない、Uターンのことだ。
 いきなりUターンはできない。だから8の字から特訓を始めた。誰もいない駐車場にペットボトルのキャップを2個置いて、延々2時間、ひたすら8の字を描き続けた。自動車学校ではあんなに苦戦したのに、今やできなくはないぞ。どうだ、上手いもんだろう?
 動画に撮って、後でフォームの確認をしよう。再生してみると、いや、これってほんとにおれか? あんなに車体を傾けているつもりだったのに、全然傾いていないじゃないか。Uターンができない理由はここにありそうだな。

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