何が１５時間１５分だ。グーグルにはすっかり騙された。片道たっぷり２３時間、往復で４６時間もかかったじゃないか。まあ道中、ひどい渋滞もあったし、道に迷ったりもしたんだけど。
公休に有給休暇を足して、３連休にしておいてほんとによかった。事前に「実際には２日でいいんじゃないの？ あと１日は予備だな」と思っていたが、なんの、なんの。
今回の苦行は、バイクの旅で最悪どうなるかの、いい事例だ。けちって有料道路は使わない、カーナビなし、うる覚えのよくわからない地理、土砂降りの雨、バイクの小さなヘッドライトじゃ視界の悪い夜道、正気とは思えないトラックの爆走、気の遠くなるような渋滞、擦り切れて出血する尻、固まって動かなくなった右膝、最後には箸も持てないぐらいに握力のなくなった右手…。それでも走り抜いた。何とかなった。
バイク用カーナビぐらいはつけようかと思ったが、ま、要らないかな。コンビニで訊けばいいから。「ここはなんて街ですか？」「豊橋です」「豊橋と蒲郡はどちらが東ですか？」「豊橋の方が東です」「しまった、反対向いて走ってる」
悪名高い名阪国道も、実際に走ってみれば、なんてことなかった。それより恐ろしいのは、東京都内のありふれた渋滞だった。これは一本橋と坂道発進の特訓ですか？ こんなこと、延々と、何度繰り返せばいいんですか？ それよりすり抜けしますか？ いやいや、それはそれで、一本橋とスラロームの特訓ですよ。私にはできそうにない。
今回の旅の目的は、もう１０年も会っていない母親と妹に会いに行くためだった。でも、それだけではなかった。２５０ｃｃのバイクで長距離走行が可能で、燃費がカタログどおり４０ｋｍ／ｌなのなら、新しいプロジェクトを開始しようと思ったのだ。いわばそのテストを兼ねていた。結果はＧｏだ。
題して「サクラマスへの道」。北へ向かって走るのだ。