水平線
最初
最新
目次

 ビーチのシャローエリア。イナパターンはとっくにピークを過ぎ、終焉を迎えていた。すでに何度かボウズを続けた。チーズはどこへ消えた? 次のパターンを見つけなければならなかった。
 社内のシーバスフリークから内線電話。仕事上の用件が済むと、彼は「ひ、ひ、ひ」と品なく笑った。「何?」と聞くと、新たなパターンを見つけたらしい。
 私のエリアと彼のエリアは20〜30km離れている。彼のエリアの方が季節が少し早い。もしかしたら参考になるかも。
 深夜3時の○○港。バイブレーションをずる引きすると、10発を超えるヒット。最大魚はヒラスズキの76cm。上ではかすりもしない。底を這わすのが肝だと。ギラパターンだ。
 おれの2週間分の釣果を一晩で? しかもヒラスズキ? どうでもいいけど、おまえ、そんな時刻に釣りしてるのか? タフなヤツだ。
 ギラパターンなら知ってたよ。深夜の港でちょくちょくヒラスズキがヒットするのも知ってたよ。ちっ。悔しいから○○港には絶対行かない!
 今夜は南の強風。海は荒れる。空気が湿って生暖かい。予報では深夜の気温はなんと20度を超える。もう12月だよ? こりゃ釣りに行くでしょう。荒れれば何パターンでも釣れる。というか、荒れパターンというひとつのパターンだと言ってもいいぐらいだ。
 先週カメラママに写真を撮ってもらったポイントを選んだ。ここは遠投要らず、比較的足場がよくて釣りやすい。しかし強烈な向かい風。その割には波がない。逆ならよかったのにな。この状況でベイトタックルはきついぜ。でも私の親指ならなんとか対応可能だ。
 深夜2時過ぎ、ごく近くでバシャっと軽いヒット。最初の印象では大きくないと思ったのだが、その後、走る、走る。出てゆくドラグが止まらない。これは大物? それともスレ?
 時間をかけて丁寧に上げると、その巨体に興奮した。これは90いったな。うれしくなって「でかいぞ、おまえ」と何度も口にした。ところが測ってみると84cmしかなかった。幅広の太った魚体だったから、実際以上に大きいと錯覚したんだね。

水平線