前日夜から昼まで強く降る雨。波の高さが終日3m。普通なら釣りに行く条件ではないのだが、私たちは二人とも釣行に飢えていた。私は3日前にはヒラスズキを釣っていたが、最近はとにかく休日出勤が多く、釣行回数が少ない。休みが取れたら、せっかくの釣りを逃したくない。ましてや友は1ヶ月近くも釣りから遠ざかっていた。
しかし磯に出ると、吹きすさぶ強風と、天高く舞い上がる波の飛沫、降りしきる雨のせいで、気持ちはしぼんだ。どちらともなく「午後になって雨が上がったら、港でまったり餌釣りしよう」との合意が成立した。
午後になって雨が上がり、風も収まってきた。私たちは人の少ない港で並んで竿を出した。でも、ときどき小サバが釣れるばかり。時間はゆっくりと流れた。
そうこうするうちに夕方の時合いがやってきた。
チャンスは私に訪れた。かすかにウキが抑え込まれる小さな当たり。すかさず合わせた。ずっしりと重い手応え。ラインがじりじりと出てゆく。やったね、こいつ。相当でかいぞ。そう思った矢先に、ハリスが切れた。
二重のダメージだった。なけなしのチャンスを逃した。おまけに魚の正体がわからずじまい。このショックは後に尾を引くぞ。こんなことなら、いっそのこと、チャンスなど来なければよかった。
しかし、その1時間後。ラストの1投に、再びチャンスは訪れた。