釣果よりも、ドラマが好きだ。フィールドは季節の変化に富んでいる。だから、舞台はむしろいつも同じ方がいい。日々の変化が際立つから。
いつも同じポイントに入るために、私はわざわざその海域の2級ポイントを選ぶ。1級ポイントは他のアングラーとバッティングするからだ。2級ポイントには誰も来ない。独りでドラマを独占できる。
ところが、今日はその2級ポイントに先行者がいた。1級ポイントが空いているにもかかわらず。もの好きな人だな。私と同じ考えか?
「狙いは何ですか?」と尋ねたら、「暗いうちはヒラ、日が昇ったらマサ」と言うので、「それじゃバッティングするので、私はよそへ行きます」と言って、立ち去った。
この展開なら、1級ポイントへ入ってもばちは当たるまい。1級ポイントを通りすぎて2級ポイントへ入ったのだが、また1級ポイントへ引き返した。到着した時にはすっかり明るくなっていた。
その30分後にヒット。カメラの動画撮影は27分で終わり。録画ボタンを押し直すのを忘れたから、ヒットからファイトまでは映っていない。
この魚は「ショゴかダツ?」と思うほどの小さなストライクだった。パシャ。それに、リールを巻けば、易々と寄ってきた。ボラでも引っかけたのか? ところが目の前に寄ってきた時にギラリと反転した。大きいじゃないか。しかもヒラマサだぞ。しかし、そこから先も楽だった。水面に躍り出て、エラ洗いの連続。あなたはヒラスズキさんですか?
でも、なぜこんな楽なファイトができたのか、考察してみる価値がある。魚が一度も向うを向かなかったからだ。小さいと思ってぐりぐり巻いたから? それともこのポイントが、溝とサラシ絡みの、とても浅いエリアだから? とにかく、教訓は「魚はバックが苦手」だ。
ヒラマサ、80cm。