もうフカセ釣りは単独ではやらないと、新年の誓いを立てた。ところがいつもの相棒がインフルエンザに罹患し、ずっと釣りを休んだ。だから一度誓いを破ってしまった。しかしフグしか釣れなかった。思ったよりも手強いぞ、寒グレ。
会社の同僚のベテラン上物師に私は言った。「寒グレって難しいですね。言うほど釣れないですよ」。すると同僚は言った。「なぜみなが目の色変えて、寒グレ、寒グレって言うか、知ってる?」「なぜですか?」「脂がのってて、すこぶるおいしいからだよ。よく釣れるからってわけじゃないんだ」
なあんだ、そうだったのか。だったら焦ったってしょうがない。相棒の回復を待つか。そして彼は今週復活した。
二人で磯の先端まで出て、水深のあるポイントで竿を出した。開始から2時間ぐらいで、私はなんとか30cmぐらいのを3枚釣った。相棒はそれよりはるかに肥え太った33cmと、私と同じ30cmの2枚を釣った。
潮の流れが複雑で、魚が食っているわけでもないのに、仕掛けが深く沈んでいく。相棒には必殺の得意パターンだが、私はこれが苦手だし嫌いだ。ウキが沈むと、ついつい合わせてしまい、空振りを食らう。それを、まだだ、まだだと、自分に言い聞かせ、竿先に当たりが出るのを待つ。
竿先にデロンと当たりが出たと思ったら、次の瞬間ラインが張って、いきなり竿が引き絞られた。お、いいサイズ。いや、それどころの引きではなかった。ドラグが滑って勢いよくラインが出てゆく。スピードもあり、これでもかという重い引きだった。ちょっと、ちょっと、これほんとにメジナですか? だとしたらとんでもないサイズ。間違いなく50cmいったな。私の45cm越えの記録は消え失せ、いきなり50cmの壁突破だよ。
相棒が隣でたも網を構えた。何度も何度もドラグを引き出され、じりじりするような時間が流れた。それでも徐々に魚が浮いてきた。あれ? なんか色が違う。
うっすらと縞模様が見えた。「チヌだ!」と私は叫んだ。「いやグレです! こんなのチヌの引きじゃないですよ!」と相棒は叫んだ。再び魚は深く潜ったが、次に浮いてきた時には水面に横たわった。私たちは唖然とした。石鯛? しかもでっかい。
相棒の少し小さめのたも網に、かろうじて収まった。測ってみると48cmあった。