水平線
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 男と生れたからにはハードボイルドでありたいと思う。しかし現実の自分を思うと、その大きな隔たりに溜息が出る。
 昨日25日、サバと遊ぼうと思って堤防へ行ったら、スピニングリールのライントラブルが連発し、キャスト切れと根掛かりによって14gのメタルジグを全て失った。手元には8gのジグしか残っていなかった。カーディナル44にPE2号、そしてフェンウィックの組み合わせでは、8gのジグに対してラインが太すぎるのか、全然飛ばない上に、フォーリングアクションにキレがなかった。サバの新しい群が入ってきて周りはほぼ入れ食いだというのに、私だけが取り残された。
 あまりに悔しく、カッとなった私は、その夜のうちに釣道具屋に行って、1号のPEラインと重めのジグを買うことにした。ところがその時、私は自分にスピニングリールを使いこなす腕がないのを棚に上げて、釣れない原因をすべてカーディナル44に押し付けた。「おまえとはもうおさらばだ。これからは最新のスピニングリールとともに輝かしい道を歩んでゆくんだ」。
 血迷って買ったのは、釣道具屋に勧められたダイワのレヴロス。それを持って、翌26日の仕事帰り、堤防に立ち寄ってキャストしたら、ぶったまげた。こんなに軽くて、こんなに飛ぶのか、最近のスピニングは?
 夕マズメの時間帯も終わり近くになって、常連のうち何人かが私の周囲で楽しい会話を弾ませていた。ときどき私もそこへ加わる。でも内心はサバを釣りたくてたまらなかった。リールはすこぶる使いやすいが、やはり腕のせいなのか、周りは調子よく釣っているのに私にはいっこうにヒットがなかった。焦っていた。もうとっぷりと日が暮れた。最後のチャンス。そしてそれは突然やってきた・・・。
 ヒット直後からすさまじい勢いで疾走した。ドラグがジーッと鳴き、PEラインがキュルキュルと悲鳴を上げた。正面に生簀を固定しているロープが沈んでいる。そこへ向かってまっしぐら。やばい。止めなきゃ。スプールを指で抑えてブレーキを強めた。ほんの少し魚のスピードは落ちたような気がした。その瞬間、ブチッという感触でラインが切れた。あっという間だった。
 その後、私は壊れてしまった。私はしくじったのか? むしろ走らせた方がよかったのか? しかしどの道、生簀のロープにラインを擦られてアウトだ。でも、魚が方向転換して、ロープを迂回するということはあり得なかっただろうか? あっという間に切られて終わりより、そっちの方がチャンスを・・・ちっ、考えても後の祭りだ。

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