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 午前の釣りを終えて、友と二人で高台から海を眺めていた。私は大好物のセブンイレブンのクロワッサンをかじっていた。
 そのときいきなり、何者かが友の帽子を弾き飛ばし、私の頬を強くはたいた。痛くはなかった。何か柔らかい感触だった。とっさのことで声を上げる間もなかった。
 次の瞬間、それまで海を眺めていた視界に、突如として躍り出たものがあった。トビだ。目の前でトビが翼を縮め、今まさに急旋回の態勢をとろうとしていた。それは美しく、精悍で、野生の輝きを放っていた。
 バサバサと羽ばたいて、トビは急上昇した。その足には私のクロワッサンがあった。私はようやく自分のクロワッサンが盗まれたことに気づいた。腹立たしさはなかった。惚れ惚れするような早業だった。
 トビは肉食のはず。いつも潮が引いた後の浅瀬に残されたカタクチイワシを食っているではないか。おまえ、クロワッサンなんか食うのか? そうか、主食ではないが、おやつなのだな? それとも私に遊んでくれと言っているのか?
 よし、遊んでやるさ。手元にカロリーメイトのメープル味があった。これも私の大好物だ。これ、食うか? 腹が減っているというより、遊んでほしいんだろう?

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