水平線
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 午前4時半。玄関の扉を開けると、生暖かい空気が頬を撫でた。その一瞬で「今日は釣れる」という予感がした。
 コンビニへ寄って、朝食を買った。そのときクルマの助手席にソニーのアクションカムがないことに気づいた。てっきりクルマに積んであったと思ったのだが、きっと家に忘れてきたのだ。まだ時間は早い。いったん家に帰るゆとりは十分にある。今日は釣れるのだから、動画に収めたい。きっと豪快なエラ洗いが撮れるはずだ。
 ところが、家に帰って机の上を見ても、アクションカムはなかった。おかしいな、どこへやったんだろう。ガレージか? そう思ってガレージにも行ったが、見つからなかった。あまり時間を費やすと、朝マズメに間に合わなくなる。釣りを終えてからゆっくり探すことにして、今日は動画撮影を諦めた。まあ、釣れた魚は、デジカメで写真を撮っておけばいいさ。
 クルマを発進させようとしてエンジンをかけたとき、助手席に立てかけた傘を見て、ふと、この中じゃないかと思った。傘の中に手を入れると、そこにあった。やれやれ。これで魚の動画が撮れるぞ。きっとブレーキを掛けたときに滑って、この中に入ったんだな。ものをなくすのは情けないが、こうして見つけることができるのは、われながら大したもんだ。
 本題はアクションカムの紛失と発見ではない。なぜこうも強く、「今日は魚が釣れる」と予感したのかということだ。頬に感じた生暖かい風のひと撫でで。
 ヒラスズキ、63cm。

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