寒波がやってきた。ぞくぞくする。今夜は止めておこうか。どうせ釣れないし。
いやいや、何を言っているんだ。ライバルは釣っているぞ。あの野郎め、ひとりで釣り過ぎだ。だから同じ会社に勤める奥さんに言っておいた。「『釣りばっかり行ってんじゃねぇ』って言ってやってよ」。ライバルに牽制球を投げておいて、その間に私が釣るのだ。そういう作戦だったはず。なのに私が釣りに行かずにどうするんだ。
でも、寒かった。手の中のリールが冷たい。息が白い。海面から湯気が立ってる。そうか、水温はまだ高いんだな。
ヒット。なんだ、1投目だぞ。実に半年ぶりの魚だった。いたね、スズキ。なぁに、ちょっと遅れていただけだ。これからバンバン釣るぞ。